それでも今、自分ができることに全力を注ぐというスタンスは変わらない。日々の練習は当然のこと、大会の告知、試合の感想や結果、ときにはチームや選手のエピソードなどをSNSで発信する。昨年のインカレ優勝の際には選手たちに煽られて軽くステップを踏みながら勝利のダンスを踊る姿が流れた。大学バスケを取り扱う番組は言うまでもなく、テレビの情報番組にも出演、Bリーグの『わかりやすい試合解説者』として網野を知ったバスケファンも多いのではないだろうか。

また、白鷗大以外にも5月の李相佰盃日本チーム監督、6月の日本代表ディベロップメントキャンプのコーチなど彼が携わる “現場” の数は増えている。
「選抜チームを見るのは楽しいですよ。バスケ界の次代を担う彼らが頑張る姿からこちらが刺激を受けることも多いですし、どこの大学だとか、どんなキャリアだとか関係なく、1人ひとりに愛着を感じます。いつも思うのは彼らがいつか真の日本代表選手として羽ばたいていく姿が見たいということ。そのために自分も頑張りたい。少しでも彼らの背中を押す存在になれたらなあと思います」
背中を押す ── その言葉を誰かから聞いた気がして考えていたら十返翔里(東海大2年)の顔が浮かんだ。昨年の8月にカナダのトロントで開催されたGLOBL JAM2025に出場したU23代表チームの中で当時18歳の十返は最年少選手。先輩たちに気後れしてしまい、コートの中でなかなか自分らしさを発揮できなかったという。
「そのときヘッドコーチだった網野さんに言われたんです。遠慮せずに思いっきり行けよ。ミスしたって失うものなんか何もないだろうって。その一言が自分の背中を押してくれたんです。おかげであの大会の経験が自分の財産になりました」
十返がいきいきとした表情で語ってくれたコメント。なるほど、そうなのか、指導者として網野が目指すものの答えはあのときすでに聞いていたのだな。

選手たちとともに日々バスケを楽しみたい
白鷗大の指導に携わってからの8年は「あっという間に過ぎた」という。が、ともに切磋琢磨した選手たちとの思い出は1年ごとに心のアルバムに残っている。
「チームの中には大学でバスケを卒業する子、その先を目指す子が混在しますが、学年を重ねるたびに自分の行動に対する責任が増していくのはどの子も同じ、平等なんですね。途中で20歳という社会的にも大人になる節目も迎えるし、視野も広がり、自分の頭で考えることも増えていくはず。そういうものを彼らがどう受け止めてコートの上でどう示してくれるのか、4年間という括りの中で変わっていく彼らの成長過程を見られるのは大学バスケの1番の魅力だと思うんですよ。ほんとに多くのバスケファンに見てもらいたいです」
新入生を迎え、新しくスタートを切った今季の白鷗大は5月の関東大学スプリントトーナメント2位、6月の新人戦で4位と優勝にあと一歩届かなかった。だが、チームの真価が問われるのはここから先だ。夏のタフな合宿を乗り切り、9月のオータムリーグ、さらにその先のインカレへと1つの課題を克服すれば、また新たな課題が生まれるコートの上で “今年の白鷗大” を築いていく。
「成長するために悩んだり、苦しんだり、各々いろんなことがあるでしょうが、そんな中でも僕は選手たちにバスケは楽しいものだというのを忘れてほしくない。どうせやるなら1日、1日、目の前のことと向き合って、ちゃんとバスケを楽しんでほしいと思っています。僕のモットーは『人生を楽しめ!』なんですよ(笑)」
行く道に高い壁があってもためらわず、大きく一歩踏み出し、片足で思いっきり地を蹴る。どうせやるならもっと楽しく、どうせ跳ぶならもっと高く。それがバスケット人生を生きる網野友雄の矜持だ。
白鷗大学 男子バスケットボール部監督 網野友雄
どうせ跳ぶならもっと高く!
(1)対戦相手にリスペクトを込めて
(2)バスケのプロ選手、さらにその先の将来を見据えて日大に進学
(3)定めた目標に向かい全力で走り抜いた2年間
(4)どんな選手も大学に入れば同じスタートラインに立つ
(5)途中でチームを離れた選手にもエールを送る
文 松原貴実
写真 鈴木真人











