どうせ跳ぶならもっと高く!(3)より続く
どんな選手も大学に入れば同じスタートラインに立つ
新しい場所で、新しいチームを作っていく難しさはコートの中に限ったことではない。白鷗大に着任して間もないころは新入生のスカウティングにも苦労したという。
「大学の知名度がそれほど高くなかったこともあって『白鷗大ってどこにある大学ですか?』と聞かれることもしばしば。そんなときは『うちのキャンパスは栃木県の小山にあるんですよ。ちょっと田舎のようなイメージがあるかもしれませんがそうでもないんです。たとえば東海大の湘南キャンパスって聞くとなんかおしゃれな感じがしますよね。けど、最寄り駅から東京駅までの所要時間はうちと同じくらい。なんならうちの方が便がいいですね』とか言って、冗談っぽくアピールしてました(笑)。幸い日本代表だった僕のことを知っている方は多かったので、まずは網野友雄を信じてもらおうと考えて、全国どこにでも足を運びしっかり顔を見て話すことは欠かさなかったです。全国大会常連チームの選手は(スカウトが)難しいだろうなと思ってましたが、リクさん(陸川章東海大前監督)から『強豪校であろうと自分が欲しいと思った選手に声をかけることが大事』と言われて、気合を入れて大濠や洛南にも行きました。誰も来てくれなかったですけど(笑)」
語り口調の明るさにつられて最後のオチで笑いそうになる。たしか苦労話を聞いていたはずなのだが。
「ハハハ…(笑)それは多分、自分のキャリアが関係していると思います。高校からバスケを始めた自分も全国大会の舞台は知らないけど、そこから頑張ってそれなりの成果を出してきた自負はある。だから、なんていうか、大学に入ったらそれまでのキャリアに関係なくみんな同じスタートラインに立つような気がするんですね。培ってきた経験やスキルが個々の財産であるのは間違いないですが、大学に入ったらまた新しい壁が現れる。僕にとって一番大事なのは白鷗大で自分と一緒にバスケをやりたいと言ってくれた子たちと一緒に壁を乗り越えていくことだと思っていました。それは今も変わりないですね」

選手が直面している壁を見極めることが大事
網野によると「大学に入って選手たちがぶつかる壁は3つある」という。
「まず1つ目はスキル、いわゆる技術面の壁。2つ目はフィジカルの壁。たとえば高校まではスキルがあるから試合に出られていた選手でもフィジカルの壁にぶち当たってそのスキルを発揮できないことがある。当然、足りないフィジカルを鍛えようとするわけですが、その間に周りの選手が伸びていくのを目の当たりにするかもしれない。それでもくじけず自分に今必要なことを継続できるか、それが3つ目のメンタルの壁です。これらは例外なく誰もが必ず経験する壁ですが、今どの子がどの壁にぶち当たっているのかを見極めることも私の仕事。そのためには選手たちをしっかり観察するよう心掛けています」
さらに言えば “観察” はコートの中だけではない。
「その子がどんな家庭環境で育ったのか、白鷗に来る前にどこの学校でどんな指導を受けてきたのか、大学に入ってからはちゃんと授業を受けているのかなど普段の生活も含めその子を知ることで、ああこういう性格なんだなとか、こういう壁にぶつかりそうだなとか見えてくるものがあるんですよ。それを見逃さないよう、見誤らないようにするにはやっぱり日頃から選手をよく見ていることが大事になる。気づいたことがあれば声かけをして、必要ならば相談にも乗る。面倒くさいことがあっても面倒くさがらない(笑)。それは必ず選手に伝わるから」
ときには雷を落とすこともあるが、それ(監督に怒られること)を選手たちが『狩られる』と呼んでいるのがおもしろい。網野の表情が変わり不穏な空気が流れると「やばいぞ、やばいぞ、狩られるぞ」と緊急事態を回避するため練習の熱量がにわかにアップするそうだ。網野が選手たちをよく見ているように選手たちもまた網野をよく見ている。











