── ショックで沈んでる暇はない!
そうです。自分で言うのはなんですが、『BREAK THE BORDER』の続きを待ち望んでくれている熱心な読者の方もたくさんいましたし、テーマ性を見ても絶対に無くなってはいけない作品だと思いました。そして、それを世に出すなら自分と同じようにバスケが大好きな人たち、バスケの発展を願っている人たちの力を借りて、いっしょに作り出す形が一番ふさわしいのではないかと思いついたんです。そういった意味でグラウドファンティングは絶好の形じゃないかと。僕は自己アピールが苦手だし、自分が発信したことに人を巻き込むのは生まれて初めてですが、もうなりふり構っていられないぐらいやりたいので、とにかく挑戦しようと決めました。目標額は90万円。バスケを愛する人たちと響き合って『BREAK THE BORDER』を作れたらこんなにうれしいことはないと思っています。
── 『ECHOES』は海外でも紹介されていると聞きました。
はい、ありがたいことにネットで紹介されたり、海外版が出版されたりしてたくさんの感想も寄せられています。自分の高校時代の話に戻ると、僕は長い間、自分がトランスジェンダーだとは思っていませんでした。そういう知識もなくて、女性に惹かれる自分はレズビアンなのかと考えていました。初めて姉に打ち明けたのは高3のとき。姉はじっくり時間をかけて理解してくれ、それがきっかけで親やバスケ部の仲間にもカミングアウトすることができました。知識を得て、自分のセクスシャリティをはっきり自覚したのは19歳のとき。それを認めることで本当に楽になりました。それまで輪郭がぼんやりしていた自分がやっと何者なのかがわかったからです。
『ECHOES』を描くことでいろんな人を元気にしたいとさっき言いましたが、その意味ではトランスジェンダーの青が苦悩しながらもまっすぐ生きようとする姿も同じです。日本にも海の向こうにもかつての自分と同じような思いで生きている人は必ずいると思うから、そういう人たちに少しでも勇気であったり、元気であったり、笑顔であったりを届けられたらいいなと思っています。
── 歩さん、もう心は死んでいませんね(笑)
はい、死んでいません(笑)。今日、こうして自分のことをお話する機会を得て感じたのはバスケットに出会えてよかったなあということ。バスケットが僕の人生にもたらしてくれたものは本当に大きかったと思います。あらためてバスケットに感謝したいですね。ありがとう、バスケット!って(笑)
『ECHOES・BREAK THE BORDER』の作者、歩さんに聞く。
バスケットが僕の人生にもたらしたもの
part1「小学3年生から学校でしゃべることができなくなりました」
part2「明日何が起こるかわからないなら、僕しかできないことをやって死にたいと思いました」
part3「バスケを愛する人たちと響き合って、もう一度『BREAK THE BORDER』を描きたい」
CAMPFIREクラウドファンディング
女子バスケ漫画「BREAK THE BORDER」続刊制作プロジェクト
文 松原貴実
写真 バスケットボールスピリッツ編集部