アメリカが負けた。
ワールドカップ・クォーターファイナル。
アメリカ 79-89 フランス
2006年、日本でおこなわれた世界選手権(現ワールドカップ)以来、国際大会では初めての敗北だ。
今年8月のエキシビションゲームでもオーストラリアに敗れ、連勝記録を78で止めていたが、本番ともいうべきワールドカップでも負けしまった。
5-8位決定戦のセルビア戦でも敗れたアメリカは、わずか1か月の間に3敗を喫したことになる。
今大会のアメリカは、NBAのいわゆるスーパースターたちが不在のチームだった。
レブロン・ジェームズやステファン・カリーらは代表選考の初段階でリストから外れ、リストに載ったジェームズ・ハーデンやアンソニー・デイビスらはこぞって辞退を申し出ていた。
それもあってか、フランス戦後の記者会見ではメンバー構成についての質問があがった。
チームを率いるグレッグ・ポポビッチヘッドコーチはそれを否定するような発言をしたうえで、今回のメンバー12人を「誇りに思う」と語った。
── と、ここまではゲームをネットで観戦し、記者会見も同じくネット配信された映像を見れば、日本にいても得られる情報だ。
むろん公式記者会見は英語のみでおこなわれるため、英語を理解できなければ、コーチや選手の言葉も理解できない。
逆に言えば、英語さえどうにかして翻訳できれば、わざわざ中国に行く必要はないわけだ。
しかし映像だけでは伝わりにくいものもある。
アメリカ戦であれば、試合直前、まだ空席もまばらに残るアリーナで、それでもひときわ大きな歓声を受けたのはポポビッチヘッドコーチだった。
次に歓声が大きかったのはケンバ・ウォーカーか、ドノバン・ミッチェルか。
NBAはそれほどまでに中国で人気のスポーツなのである。
ファンは彼らの超絶プレーを期待して、アリーナに集まってくる。
しかしフランス戦の終盤、アメリカの旗色が悪くなると中国のファンは一斉にアメリカに対してブーイングを浴びせ始めた。
いや、数人は試合序盤からアメリカの選手がフリースローを打とうとすると
「エアボール、エアボール」
と集中力を乱そうとしていた。
試合終盤にはそれが会場全体を包み込むような大きなブーイングへと変わっていったのである。