「今はスタメンで出してもらっているので、あとのことを考えてというか、ベンチから見ているときもスタメンが流れを作らなければいけないなと思っていたので、今大会は自分がスタートとしての役割をちゃんとやらなければいけないなという思いがあります」
今大会をそう位置付けながら、その役割を果たせなかった。
何か意図があったわけではない。
むろん気を抜いていたわけでもない。
自分でも気づかないほど、アジアカップで見せたような積極性が抜け落ちていた。
「今までがちょっと出来すぎだったのかなというところもあるので、今日のような自分の中でダメな試合というものを一度経験して、これからこういう試合はしないという教訓になりました」
まだ21歳である。
もちろん日本代表である以上、年齢は言い訳にならないし、それをする赤穂でもない。
ただ、まだまだ世界と戦う経験があまりにも少ない。
チャイニーズ・タイペイ戦のようなゲームが表に出たほうが彼女にとっては大きな糧となる。
失敗は成功の母である。
チャイニーズ・タイペイ戦だけを見れば、日本代表のスタメンとしての及第点は与えられないだろう。
しかし彼女は確実にステップアップをしている。
プレー面だけでなく、メンタル面でも、である。
今大会は赤穂と同世代の選手が3人入った。
梅沢カデシャ樹奈、オコエ桃仁花、そして宮下希保。
なかでも宮下は初のA代表選出である。
チームのルールやプレーのポイントなどわからない点も多い。
「自分が初めてA代表での大会だったときを思い出すと、何もわからない状態でもやらなければいけなくて、希保ちゃんの気持ちがわかるんです。何かわからないことがあれば、わかる範囲でしっかり教えてあげようと思っています」
プレーでは学ぶことも多い赤穂だが、同世代の選手に気を回す心の余裕が出てきたことはきっとプレーにもいい影響を及ぼすはずだ。
冒頭のエピソードからもわかるとおり、フィジカル面はまだまだ世界に遠く及ばない。
それは本人も十分に理解している。
「もっともっとフィジカルを……本当にフィジカルのところで勝てるようにならなければいけないなと思っているので、そこはずっと課題です」
最終戦で戦うオーストラリアはチャイニーズ・タイペイ以上にフィジカルコンタクトが強く、アグレッシブさを欠くプレーをしたら、一気に突き放されてしまう。
「今日みたいな入りをしていたら一気に離されてしまうし、相手は本当に強いと思うんです。でも今日の試合で後半の途中からでもリバウンドに参加すればしっかり取れていたので、明日は試合が始まった1秒から40分まで、最後までずっとそれをやり続けなければいけないなと思います」
フィジカルの差は一朝一夕で埋められるものではない。
アジアカップでブレイクし、今大会も続けてスタメン起用されているのは世界基準のフィジカルを連続して経験してほしいからだ。
それを打破するために今の自分に何ができるか。
今夜のオーストラリア戦は赤穂個人にとっても今後の試金石になる。
文・写真 三上太