石崎巧の連載コラム 【404 Not Found】

第5回 『わたしの戦闘力は530000です』

これまでの人生でコーヒーが好きだったことはなかった。

コーヒーを日常的に飲む人が信じられなかったし、食後にコーヒーか紅茶かを提供してくれる時には迷わず水をもらっていた。

だが僕は今、狂ったようにコーヒーを飲み散らかしている。

毎日のようにどこかしらのカフェに出没してはコーヒーを飲み、調子がいいとハシゴまでする有様だ。

そういう話を正中岳城にしたら、“誰がカフェでコーヒーやって?”とでも言いたげな顔で、

誰がカフェでコーヒーやって?

と言った。

言動の不一致がない、とても誠実な男だ。

 

オフの間に東京へ行く予定があったため、普段沖縄でよく通うカフェのご主人にオススメのお店を聞いたら、

表参道 is 最高。最&高。

みたいなことを言っていたので、オススメされた店を片っ端から回ってきた。

実際に行ってみると寸分違わず最&高だったので、皆さんにその感動をお伝えしたい。

1軒目はLATTESTさん。

地下鉄表参道駅からシャレオツな裏通りをズンズン進んでいったところにあるシャレオツなお店だ。

そもそも僕のような田舎もんは、これまで表参道などという煌びやかな場所に足を踏み入れることを許されてこなかった。

どのような服装がこの街に相応しいのかまるでわからなかったので、大昔に近辺を訪れた時の記憶を頼りに、代々木第二でのリーグ戦終わりみたいな格好で来てしまった。

そしてそれはどうやら正解ではなかったようだ。

シャレオツスカウターを標準装備したファッショニスタに、

戦闘力…たったの5か…ゴミめ…

とか絶対言われてると思う。

下級戦士が戦闘力53万のエリートで溢れかえるカフェに立ち入るには大変な度胸が求められるが、まあ死ぬわけでもないので気にせず入店した。

注文を済ませて席に着くと、目の前の席でシャレオツな若いカップルがイチャついている。

察するに2人で旅行の予定を立てているようだが、どうにも彼氏の方は落ち着きがない。

るるぶ的な雑誌を見ながら四国行きの計画を練っている中、彼女にボディタッチを繰り返しては怒られ続けている。

会話の最中も心ここにあらずといった感じで、気持ちは既に道玄坂方面へ全力ダッシュしているようだったが、旅館が混浴か否かといった話題に移ると圧倒的なエナジーでネット検索をかけていた。

すぐに(彼氏の)条件に合う旅館が見つかったものの、あいにく予算を大幅に越えていたらしく、彼女は別の手頃なところを探そうと提案した。

しかし、彼氏はそれまでに見せなかった真剣な表情で、

2人の最高の思い出にしたいから

とかなんとか言いながら混浴付きの旅館に電話をかけていた。

 

沖縄から戦闘力5でここまできた僕の思い出も真剣に心配して欲しかった。

コーヒー、とっても美味しかった。

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