「プレーオフで戦うための準備をはじめている」
セミナー中は、受講者からの質問にもアドキンスコーチは丁寧に答えていく。「ファンダメンタルの定義とは?」というミニバスコーチからの質問が印象深かった。アドキンスコーチの答えは、「ファンダメンタル(FUNDAMENTAL)のスペルはFUNからはじまる。だからこそ、楽しまなければならない」。基礎練習は地味で、きつく、同じことを繰り返す。それを楽しくさせることは難題であり、コーチにとっては大切なことである。
ラストメッセージは、「この自粛期間に何をすべきか?」だった。現在中断中のNBAだが、このセミナー同様にウェブ会議ツールのZOOMを使ったワークアウトに取り組んでいる。今シーズンのウィザーズはロスター17人中11人が23歳以下であり、とても若いチームだ。彼らに対し、ボールハンドリングなどのスキルトレーニングやストレングストレーニングを課し、止まっているわけではない。
さらに2016-17シーズンに出場したプレーオフの映像を教材とし、若い選手たちへのマインドセットを図る。
「レギュラーシーズンとは異なるプレーやフィジカルの強度、ホームコートアドバンテージの大きさ、同じ対戦相手との連戦に対してどうアジャストするかなどを意識づけしている」
特にカンファレンス・セミファイナルでのボストン・セルティックス戦はホームゲームで勝利し、辛くも3勝3敗に持ち込んだものの、アウェーでの最終戦で敗れた悔しい試合だ。それを「3日に1度見せている」とアドキンスさん。そこで勝つためのメンタリティーを植え付けるとともに、ジョンとのプレーもイメージさせている。ジョンがケガでほぼ2シーズンを棒に振ったことにより、ブラッドリー・ビールとの“ダブルエース”で一緒にプレーした選手がほとんどいない。イアン・マヒンミとトーマス・ブライアントくらいである。ケガから戻ってくれば、必然的にチームの中心となるジョンをどう生かし、また生かされ、チームとして向上していくためのイメージトレーニングがどんなチームケミストリーを生み出すのか、今から楽しみだ。
来シーズンへ向けた強化とアドキンスコーチは話していたが、現在イースタンカンファレンス9位、8位オーランド・マジックとは5.5ゲーム差であり、残りの試合数にもよるがプレーオフ進出の可能性は消えていない。プレーオフへ向け、八村には「スペースを使って3Pシュートを決めたマーキーフ・モリスのようなプレーをしろ」と課題を出す。アドキンスコーチは自粛期間を有効活用し、「プレーオフで戦うための準備をはじめている」と話してくれたことが頼もしく、うれしかった。まだまだプレーオフも、優勝だって狙えるゾ! GO WIZARDS!!
東頭ヘッドコーチが主催するオンラインセミナーの次回は5月13日(水)19:55〜、大神雄子アシスタントコーチ(トヨタ自動車アンテロープス)、前田顕蔵ヘッドコーチ(秋田ノーザンハピネッツ)、水野宏太アシスタントコーチ(アルバルク東京)がゲストとして登場する。今後も週末にはNBAなど海外のコーチとオンラインでつながり、平日は日本人コーチとの座談会を予定している。詳細や申し込みは東頭ヘッドコーチのWEB(https://coachtodo.com/)をチェックしていただき、見聞を広げる機会にしてみてはいかがだろうか。
文・写真 泉誠一