「『ポイントガードで』って言われたとき、すぐに挑戦しようと思いました(齋藤)」
2019-20シーズンのWリーグに一陣の風を吹き込んだのは間違いなくトヨタ紡織サンシャインラビッツだった。それまでリーグの中堅からなかなか抜け出せずにいたチームが、開幕2戦目から11連勝を果たすなど、これまで強豪と言われていたチームを脅かす存在にまで変貌した。その立役者とも言えるのが齋藤麻未と東藤なな子である。開幕から全試合スタメン出場を果たした2人のルーキーの躍動はチームにとって大きな追い風になった。東藤はWリーグの新人王に、齋藤も、手前味噌だが、弊サイトの新人王に選出させていただいた。それほどまでに2人のインパクトは強烈だったのだ。
結果として新型コロナウィルスの影響で中止に追い込まれたシーズンを齋藤と東藤に振り返ってもらった──。
── ルーキーシーズンとなった昨シーズンを振り返って、どのような感想を持っていますか?
齋藤 率直に一番感じたのは“長かったな”ということです。先輩たちからは「リーグ戦が始まったら、あっという間だよ」って言われていたんですけど、シーズンの合間に日本代表活動や皇后杯などがあって、試合のない週も多かったので、長かったと感じたんです。それと大学時代とは違ってレベルが高いなということも肌で感じました。
東藤 私は楽しかったです。シーズンが始まる前は、その前のシーズンで引退した先輩たちが多くて、チームとして悪い流れのままシーズンに入るのかなって想像していたんです。でも実際には開幕2戦目から11連勝もしましたし、高校とは異なる高いレベルでプレーできたことも楽しかったです。
── お二人はおこなわれた全16試合でスタメン起用されました。入団当初からそうなることを想像していましたか?
東藤 アーリーエントリーで参戦していたとき(2018-19シーズン)はベンチスタートだったので、そのころはスタメンになれるように頑張ろうと思っていました。でも新しいシーズンが始まったときに中川(文一ヘッドコーチ)さんがAチーム(スタメン組)に入れてくださって、しかも自分がフィニッシュするセットプレーが多く用意されていたので、「ああ、自分はそういう役割なんだな」と思って、やっていました。期待されているなら、しっかり応えようという感じでしたね。
齋藤 私はスタメンに出られたことに正直びっくりでした。トヨタ紡織に入るときに中川さんから「ポイントガードで起用する」って言われていたんですけど、学生時代にポイントガードをやったことがなかったんですね。だから入った当初はスタメンで起用されるなんて思っていなかったし、そもそもポイントガードができるという自信もなかったので、スタメンで出る心の準備もできていなかったです。春先はどうすればポイントガードになっていけるのかを探りながら練習していましたし、夏には腰を痛めて、なかなかチーム練習にも参加できない日々も続きました。スタメンに起用されるようになったのはリーグが開幕する3週間くらい前なんです。
── 齋藤さんは大学までフォワードでした。ポイントガードへのコンバートに違和感なく取り組めましたか?
齋藤 はい。レベルの高いところでやろうと思えば、与えられたポジションをやっていくしかないなと思っていたので。それにフォワードとしてはけっして大きいサイズではないので(173センチ)、ポイントガードでって言われたとき、すぐに「挑戦しよう」って思いました。
── とはいえポイントガードはけっして簡単にできるポジションではありません。どのようなポイントガード像を築いていこうとしましたか?
齋藤 私はこれまでずっと得点を取ることが仕事だったんです。だから理想のポイントガード像はパスもするし、ゲームメイクもするんですけど、自分の特長である得点力も生かしていく……開幕戦のトヨタ自動車アンテロープス戦ではアシストもできたし、得点もできたので、そこでちょっとやっていけそうなのかなと思ったんです。