ギリギリのところで表舞台に踏みとどまった三井は、このコメントからもわかるように、環境も含めた周囲への感謝が常に根底にある。本業が住職である三井が最も感謝の意を示しているのは家族。「親父や家族にはだいぶ負担をかけてしまっていますが、後押しもしてくれているので、その分しっかりやりきらないといけない」と、責任感をモチベーションに変えている。そんな中で40歳を迎えようとしている今、三井の頭の中には引き際もちらつき始めているが、三井の人となりを知る人ならおそらくわかっているだろう。そして三井自身も自覚している。彼のバスケットに対するパッションが、そう簡単に醒めるものではないということを。
「とりあえずは今シーズンを節目にしようかなと思ってます。今シーズンが終わって、そこからバスケットとどう向き合うかを考えたい。ただ、バスケットから完全に離れるというのは100%無理(笑)。僕は自分でチームを作ったり、人を集めてピックアップゲームをしたり、そういうのがすごく楽しい。ワクワクする空間って与えられるものじゃなくて、自分から作っていけるもので、自分は実際に行動を起こしてきたし、そういう楽しみ方があるということを周りにも伝えていきたいです。このプレミアリーグみたいな派手な舞台だけじゃなく、そこと同じ熱量でやれる環境は自分たちでいくらでも作れるということを示していきたいですね」
バスケットからは一生離れることができないというマインドは、三井に限らず多くのストリートボーラーが持ち合わせている。黎明期を支えたボーラーはいわゆるアラフォー世代になっているが、今なお現役でプレーしているボーラーも少なくないことを考えると、それはやはりストリートの環境によるところが大きいのだろう。一昔前と比べると徐々にマイナースポーツから脱却しつつある日本バスケット界で、ストリートボールは王道ではないかもしれない。しかし、王道ではないからこそ、今もその道は続いているのかもしれないのだ。
「シーンが盛り上がって長く続いてほしいという気持ちはもちろんあります。でもやっぱり、僕らのシーンは結果よりもやり続けてなんぼみたいなところがあるんですよ。今日結果を出しても、明日からまた新しいチャレンジをしないとつないでいけない。BリーグやNBAではないので、その瞬間をどうするかという気持ちで毎日やっています」
三井はLEGEND王者の他にも、ALLDAY優勝や1on1世界大会優勝など、数々の栄光をつかんできた。それにもかかわらず、「若い頃から本気でやりきれていたかというと、そうじゃない。後悔もあった」と振り返る。「それもあって、今も続けてるんだと思うんですよ」という言葉は、「やり続けてなんぼ」というストリートのマインドにほかならない。
そして三井は、「今やるべきことはいっぱいあるし、まだやれることもある。若い子たちには自分のような後悔を少しでも減らしてほしいので、自分が背中を見せることで若い子たちの未来が良い方向に転がっていけば」とも言う。落合も「僕が辞めるまで辞めないでほしい」というように、三井はまだまだこの世界でその存在を必要とされている。まずは残り約1カ月の3x3.EXE PREMIERのシーズンを後悔なくやりきってほしいと思うと同時に、それとは矛盾してしまうようだが、「まだやりきっていない」と言ってプレーへのパッションを燃やし続けてほしいと思ってしまうのだ。
文・写真 吉川哲彦