2005年前後に様々なリーグやトーナメントが誕生して以来、日本のバスケット界のシーンの一つとして定着しているストリートボール。その黎明期を彩ったボーラーの中には、15年以上を経た今もプレーを続けている者が少なくない。FIBAによってルールが整備されたことで3x3が競技として成立し、日本でも2014年に3x3.EXE PREMIERという新たなリーグが創設されたことが、その要因の一つ。リーグ9シーズン目となる今夏も、かつてストリートボールの一時代を築いたボーラーの名前をいくつか確認することができる。
そのうちの1人、三井秀機は今年で40歳。LEGENDで2シーズン連続王者となるなど、押しも押されもせぬ名ボーラーとして名を馳せた、あのM21だ。自ら立ち上げたストリートクルー、UNDERDOGは今もSOMECITYやALLDAYで一大勢力として奮闘中。三井がストリートボールの界隈に与えた影響は大きく、三井との出会いでバスケット人生が一変した者も少なくない。その代表格である落合知也は、「ちょっと照れくさいんですが」と笑みを浮かべながら三井への恩義を語る。
「間違いなく僕のキャリアを変えてくれた人。バスケットボールに対する意識だったり、バスケットボールカルチャーにまつわるいろんなものを教えてくれましたし、UNDERDOGにはクリエイティビティな先輩もたくさんいて、ファッションやファンへの振る舞いなんかもそこで勉強しました。三井さんに出会わなかったら、僕はバスケットを辞めたまま違う仕事をしていたと思います。本当に感謝ですね」
三井の存在がなければ、落合が3x3日本代表として東京オリンピックのコートに立つことはおそらくなかっただろう。その事実一つだけでも、三井がもたらしたものは大きい。ただ、三井がそうやって仲間をシーンに引き込んできたのは、三井自身が高い熱量でバスケットに取り組みたいという一心だった。
「自分が楽しみたいというのが一番です(笑)。1人じゃこういう環境でできないし、バスケットと熱く向き合えるのも仲間がいて、環境があってこそだと思うので」
過去から現在に至るまで、三井は常に環境に感謝し続けてきた。三井自身も日本体育大卒業後に一度バスケットから離れかけたことがあり、その自分をバスケットの世界に引き戻したのがストリートボールだった。そして、故郷・福岡に帰って以降もプレーを続けることに関しても、3x3という舞台があり、共に戦える仲間がいる今の環境が全てだと三井は言いきる。
「僕の場合、福岡に帰ったらバスケ熱もちょっと落ちていって、たまに東京に行きながら少しずつという感じになるのかなと思っていたんです。今一緒にやっているメンバーは僕が福岡に帰ってすぐの頃に出会った奴が多いんですが、最初は正直『本気でバスケやってるのかな』という印象でした。でも、彼らと一緒に時間を重ねるにつれて、こういう舞台に一緒に立つことができている、というよりは立たせてもらっている。この年齢までプレーできているのは、やっぱり環境でしかないですね」
ただ、今シーズンに関しては、三井は3x3.EXE PREMIERでプレーする場を失う可能性があった。昨シーズンに続いてFUKUOKA YUWA MONSTERS.EXEの一員として参戦する予定だったはずが、チームの運営会社がシーズン開幕直前に撤退。今シーズンに限ってリーグがチームを管轄下に置くことで参戦にこぎつけたという経緯があったのだ。チーム名がFUKUOKA.EXEとなっているのはそのためである。
「始まる1カ月前の話だったので、正直心は折れかけました。でも、周りの福岡の先輩や、以前からサポートしてくださっていた方々の後押しもあって、他の選手も含めてなんとか気持ちを折られずにもう1回頑張ろうと思えました。リーグのサポートもあるので、今シーズンは1試合も無駄にできないなと思ってます」