前回も記したが、女子のアジアカップで5連覇を成し遂げた国はない。
それに挑める権利を持つ彼女たちが結果を追求しながら、一方で内容としても、日本のバスケットに対する考え方を大きく変えようというわけだ。
壮大なチャレンジである。
恩塚ヘッドコーチの解説は続く。
「もう少し言うと、たとえばオフェンスの局面って限られていると思うんですね。マイボールになった瞬間、そこからシュートチャンスを作ろうとしている局面、チャンスができた局面、チャンスができた局面でシュートを打つか、アタック(攻撃)する局面、それをサポートしている局面、あとはシュートを打つ局面。これらの局面でバスケットボール選手としてどんなことを考えていったらいいのか。そこをきちんと理解できて初めて、コート上で自分が自信を持ってプレーできる選手になれるんじゃないかなと思ったんですね」
女子日本代表でのキャリアをアナリストからスタートさせた恩塚ヘッドコーチらしい、緻密な分析である。
一方で積み重ねてきた分析をそのままで終わらせず、結果と内容という「二兎」を得るべく実行に移しながら、日本のバスケット界をよりよくさせようという強い意志も、その戦略から探り当てることができる。
恩塚ヘッドコーチは、選手が判断するバスケットを通して、日本のバスケット界に一番訴えたいメッセージがあると言う。
「たとえばディフェンスが遅れてくるなど、目の前にチャンスがあるのに、そのチャンスを生かして攻めるよりも、コーチに言われたプレーを選択してしまう。あるいは自分自身で考えずに、チャンスの機会損失をしてしまう。そういう現場を見たときに、私たちはバスケットのしかたを考え直したほうがいいんじゃないかと思うことがあったので、今はそこを追求しています。代表選手たちにも、チャンスで攻める、ディフェンスが遅れていたり、ずれていたら、そこが1対1のチャンスで、そのチャンスを見逃さずにプレーしてほしいと強調しています。それができることでパフォーマンスも上がるんじゃないかなと思っています」
ヘッドコーチとしては暫定かもしれない。
代行と言う人もいるかもしれない。
しかし、アジアカップのヘッドコーチは紛れもなく恩塚亨である。
彼の目指すバスケットは、日本の未来を、きっと、変える。
文 三上太
写真提供 日本バスケットボール協会