結果としてスペインは一度も負けることなく、今大会から新調されたトロフィーを手にした。
それ以外のチームはどこかで一度は負けている。
しかしどのチームのヘッドコーチも選手も言い訳じみたコメントは残さなかった。
自分たちはやるべきことをやったが、相手のほうが素晴らしいバスケットをした。
彼らは素晴らしいチームだ。
そう言って相手をたたえるのだ。
そして必ずと言っていいほど、コーチは自らの選手を、選手は自らのコーチを「誇りに思う」とコメントする。
ワールドカップ初出場で6位となったチェコのロネン・ギンズブルグヘッドコーチは大会を振り返りながら声を詰まらせたし、
1967年以来、52年ぶりのワールドカップで8位となったポーランドのマイク・テイラーヘッドコーチは、最終戦に負けた後でさえ、隣に座るアダム・ワチンスキと笑顔を交わしていた。
彼らもまたチームで戦い、チームで敗れたのだ。
もうひとつ、勝敗とは別のところで印象に残ったことがある。
彼らが自分たちの戦いぶりを次世代に伝えようとしていることだ。
ポーランドのテイラーヘッドコーチは「私たちの戦いを見て、次の世代、男の子も女の子もインスパイアされることを望む」と言っていた。
チェコのパベル・プンプルラも同様のことを言っていた。
自分たちの戦いはここで終わったが、次のステップアップは任せたぞ。
そんなニュアンスだろうか。
むろんそれは日本も同じこと。
13年ぶりのワールドカップは1勝もあげることなく終わったが、彼らの挑戦はこれからも続く。
ワールドカップが終わった3日後、アルバルク東京の馬場雄大がNBAのダラス・マーベリックスのトレーニングキャンプに参加することを明かした。
マーベリックスからのオファーがあったようだが、実際に契約を勝ち取れるかどうかは別問題。
それでも彼はアメリカに行くことを望んだ。
彼自身の夢であったからだが、ワールドカップでひとつも勝てなかった、個人として通用するところもあったが、このままではいけないという危機感が彼の背中をさらにもうひと押ししたのだろう。
夢が叶うかどうかはわからない。
しかし動き出さなければ夢が叶うこともない。
渡邊雄太、八村塁だけでなく、馬場の挑戦そのものが次世代の選手たちに送る強いメッセージである。
勝ちたかった。
でも勝てなかった。
だから挑戦し続ける。
This is Basketball.
文・写真 三上太