これからの時代は値切りですね、値切り。
「次は! 絶対! 値切ってやっかんな!」
とかつぶやきながら変なテンションでモールを歩いていると、新しいお店がオープンしていることに気づきました。
近寄ってみるとどうやらこのお店、「人をダメにする」でお馴染みのビーズクッションを取り扱っている模様です。
しかし、僕は前々からビーズクッションが嫌いだったので、一瞬で興味が失せました。
この商品の座り心地はさておき、なんせ人をダメにするので人類にとってなんの利益も生み出さない、害悪と呼ぶべき存在だからです。
こんなものは腐ったミカンと同じです。
腐ったミカンと一緒にいたら僕がダメになっちまう。
そんなことになれば僕の身近な人たちまで腐っちまう。
しかもだいぶいいやつじゃんこれ、けっこうなお値段しますよ。
そりゃ大きな買い物するときは値切るって心に決めてますけどね、不必要なものに金を使うほどボカァ愚か者じゃありません。
ましてや相手は腐ったミカン、こんなものに出すお金は一銭たりともありません。
こんな店からは早いとこ距離を置こう、それが人類のためになる。
そう思ってクッションから視線をそらすと、脇にある興味深い商品が目に入ったんです。
それは長い筒形のクッションでU字型になっていて、間に入って背中を預けるとちょうど肘掛けになるというスグレモノでした。
これはいい。こういうの待ってた。
最近パソコン作業の増えた僕は、机での姿勢に疲れたらソファに移動するのですが、これがなかなかしっくりこない。
膝の上にパソコンを置いていると腕は疲れてくるし、めっちゃ膝が熱くなる。
かといって折りたたみの机を置いても高さが合わないし、背もたれを使えないのでこれまたしんどい。
そんな僕の悩みにこのクッションはピッタリ応えてくれたのです。
なんならこのクッションを逆に向けて使えば、クッションの上にパソコン置けるから膝も熱くないし、目線も上がって肩こり解消じゃね?
いやでもそうなるとパソコンに熱がこもって動作が重くなるんだよなあ、クッションの上に板とかくっついちゃってるようなやつがあれば理想なんだけどなあ、惜しいなあ…
なんてことを思いながら店内を見回してみると…
ありました。
いやあるんかい。
このお店は神ですか?
神様にはお布施を忘れないのが石崎なので、このU字と板付きを頂いてパソコンライフに潤いを与えることと致しましょう。
その旨、店員もとい神の使いにお伝えすると、
「今ならこっちのやつ(腐ったミカン)一緒に買うと2割引にしますよ」
あれ?
お安い買い物ではないので、
「いざ値切らん!」
と鼻息荒く意気込んでいたら、むこうから値引きしてきた?
やはり神には全てお見通しなのですね…
いやいや、そうは言っても抱き合わせの商品が腐ったミカンではお話になりませんよ。
あんなものは人類の害悪。
いくらお得な買い物とはいえ、無駄なものに金は出さないと何度も言ってるじゃないですか。
まあでも、ありがたい神のお告げを無下にするのも心が痛む。
どれ、ここはひとつ試しにこの腐ったミカンに腰掛けてみて、
「あ〜、やっぱり微妙に合わない感じですね〜、とりあえず今日はそっちのやつだけにします」
とかなんとか言ってこの場を切り抜けるか。
それが大人の断り方ってもんだよね。
よし、そうと決まればちょっくら失敬して…
せーの、よいしょー!
全 部 買 っ た 。
今回の引用元:『3年B組金八先生 DVDコンプリートBOX(全85枚組)』/小山内美江子原作、脚本/ビクターエンタテインメント 2011
石崎巧
1984年生まれ/北陸高校→東海大学→東芝→島根→BVケムニッツ99(ドイツ2部リーグ)→MHPリーゼンルートヴィヒスブルグ(ドイツ1部リーグ)→名古屋→琉球/188cmのベテランガード。広い視野と冷静なゲームコントロールには定評がある。
著者近影は本人による自画像。