三遠ネオフェニックスの河村勇輝クンが話題を集めている。
高校生ながら三遠のスタメンに抜擢され、ある記事ではすでに「エース」とも表現されていた。なるほど、確かにそう言われるだけの活躍はしているようだ。
でも同じ「特別指定選手」ならば、高校生や、大学生でも下級生ではなく、春から「新社会人」になるような大学4年生に、もっと注目していいんじゃないかと思う。彼らは曲がりなりにもプロとして生計を立てていく覚悟を持った選手たちだからである。
ご存知の方も多いと思うが、特別指定選手でプロチームのスタメンに起用されているのは河村クンだけではない。
琉球ゴールデンキングスの牧隼利クンも1月29日の大阪エヴェッサ戦からスタメン起用されている。筑波大学を3年ぶり5度目のインカレ制覇に導いた同チームのエースを、琉球の藤田弘輝コーチはこう評している。
「大阪、サンロッカーズ渋谷とアスレチックなチームとの試合が続くので、牧のプレータイム増加はそこからだと考えていました。サイズとフィジカルと運動量があるので、ディフェンスで非常に使いやすい。でも牧の一番のいいところはバスケットにめちゃめちゃマジメで、めちゃくちゃワークアウトをするところ。試合が終わった後にウェイトトレーニングをしたり、暇さえあれば自主練をしています。そういうメンタリティはルーキーながら尊敬しています」
2月2日におこなわれたサンロッカーズ渋谷戦では、第4クォーターの残り1分8秒に起死回生の同点3ポイントシュートを沈めるなど、逆転勝利に貢献している。
「学生時代に比べると自分がボールを持てる時間は少なくなっていますが、常に準備はしています。あそこはノーマークで打ち切らなければいけないところだったので、打ち切れてよかったです」
スタメンで起用されているとはいえ、ポイントガードではない彼がボールを持つ機会は限られる。チームメートもまだ彼のプレースタイルをあまり知らないし、たとえボールが回ってきたとしても、やたら滅多に攻めるわけにもいかない。チームの方針と折り合いをつけながら、そのなかで自分のプレーを出していく。それが特別指定選手というものだろう。
ただチャンスのときに臆することなく、今日の牧クンがそうであったように、しっかりとシュートを打ちきれるか。決めきれるか。こんなところにもプロとしての資質を見出すことができる。
期間限定の特別指定選手とは異なり、大学卒業見込みの4年生たちはたいていそのまま、特別指定選手制度で加入したチームと契約している。牧クンも今シーズンが終われば、正式に琉球でのプロ生活を始めることになるのだろう。
「インカレで優勝したことを忘れたわけじゃないけど、夢だったのかなと思うくらいすごく前のことのように感じます。今はもう次の自分のバスケット人生が始まっているので、楽しみながら、毎日学びながら、プロとしてやっていけるかな」
同級生よりも一足早く、“社会人”としての一歩を踏み出した大学生たちがいる。話題性にはやや劣るかもしれない。しかし彼らの初々しく、粗削りな覚悟に触れられるのも特別指定選手制度の期間だけである。まだ何色にも染められていない彼らの“今”に注目したい。
文・写真 三上太