何よりも実力がものを言うプロスポーツの世界では、シーズンが終わると引退を迫られる選手が必ず現れる。Bリーグにおいてもクラブ側の意思による契約満了は常に発生し、該当選手はそのまま身を引く者もいれば、現役続行の可能性を模索する者も当然いる。現在公示されている自由交渉選手リストを見ると、このままフェードアウトするのはもったいないと感じられる選手も少なくない。
大友隆太郎も、少し前まではその1人だった。東京ユナイテッドバスケットボールクラブを退団した大友に手を差し伸べたのは長崎ヴェルカ。オファーは、ユーススクールアドバイザー兼練習生というものだった。

「昨シーズンが終わった後、契約先がない中でどうしようかなと。僕も家族がいるので、このままずっとニート生活をするわけにもいかないし、他の仕事をしたほうがいいんじゃないかと思っていた中でお話をいただけて、本当にありがたい話です。迷うことなく、話をいただいた瞬間に『行きたいです』と即決でした」
8月末になって選手契約を交わすに至ったが、これはプレシーズンゲーム期間限定の短期契約という珍しい形態であり、大学の後輩でもある馬場雄大の日本代表活動参加による不在などのチーム事情からくるものだった。4試合のプレシーズンゲームが組まれた中、その最後となる9月13日の川崎ブレイブサンダース戦でコートに立った大友の出場時間は4分18秒で、スタッツもファウルが1つついたのみ。それでも本人にとっては、選手としてプレーできているという事実が第一だ。
「このレベルの試合でコートに立てたということは、まず喜びが大きいですし、昨シーズンまでの僕からしたら、このレベルに混ざってバスケットボールができるということが考えられないことだったので、すごく幸せを感じました」
プレシーズンゲームはテレコム・バスケッツ・ボン(ドイツ)を迎えたホームでの2試合とアウェー千葉ジェッツ戦、そしてこの川崎戦の4試合。出場時間が短い中でも、大友は自身の持ち味を出せたという感触があり、ポジティブにバスケットと向き合うこともできている様子だ。
「オフェンスでもシュートタッチは良かったですし、ディフェンスも自分の得意なフィジカルを生かしてしっかり戦えたところがあるので、手応えは感じました。それと同時にできない部分、課題というのも感じて、それをコーチからすぐ指摘してもらえるので、それを修正していく楽しみというのも毎日感じています。すごく楽しんでこのプレシーズン期間を過ごすことができました。
プレータイムは僕がコントロールできることではないので、コートに出してもらえた以上は与えられたことをやるだけ。コーチにも明確に自分の仕事、やるべきことを整理してもらっているので、それをただ全力でやっていくことだけかなと思ってプレーしてます」

契約の上では大友の立場は何も保証されていないものだったが、この時点で長崎にまだ選手の枠が残されていたことも事実。プレシーズンゲームの内容如何で契約を延長する可能性があることは、これまでの他クラブの事例からも推察することができる。ただ、この川崎戦までの間に伊藤拓摩GMとは「まだ何も話してないですね」ということだが、大友は血眼になって契約を勝ち取ろうと己を見失うのではなく、良い意味で開き直りに近い境地に達している。この状況下であっても大友に切迫感や悲壮感はなく、バスケットと向き合える喜びに勝るものはないのだ。











