越谷がまだB2所属だった一昨シーズンに移籍してきた喜多川は、入場者数が急速に増えていった過程をよく知っている。もちろんそれはB1昇格による効果もあるが、フロントが地域に根差す努力を怠らず、チームもひたむきなプレーを心がけてきたからこそだ。
「試合をしてファンの人たちに勝利を届けるのが僕たちの仕事。勝ち負けはもちろんあるんですけど、応援して良かったと思ってもらえるような試合を常にしなきゃいけないということは毎試合思いながら取り組んでるので、そういった想いを持ち帰ってもらっていたら良いなと思いますし、それがきっかけでどんどんお客さんが増えていく、入場者数に直結するということになれば光栄なことだなと思います」

そしてそれは、安齋竜三ヘッドコーチが折に触れて選手たちに訴えかけてきたことだ。「また竜三さんと一緒にやりたいと思って越谷に来た」という喜多川にとって特別な存在である安齋HCは、この度越谷を去ることになった。この4シーズンの間に越谷に植えつけていった “戦う意味” をさらに追求していくのは、長く手を取り合ってきた喜多川に課せられた仕事だ。
「バスケットの深みみたいなものを教えてくれて、バスケット面白いなと思わせてくれたコーチだったので、ブレックスと合わせて8シーズンお世話になったんですけど、竜三さんがいなかったら今の僕はいないんじゃないかと思えるくらい、すごく大事な存在です。竜三さんが残してくれたカルチャーは本当に素晴らしいものなので、アルファーズにとっても大きな存在だったと思いますし、チームがこうして大きくなっていったのも、竜三さんが前に出て僕たちやファンの方々にいろいろと投げかけてくれたことが大きいと思うので、その財産はこの先も引き継いでいかないといけない。ファンに対してどういう試合を見せなきゃいけないかというところは常に持って戦っていきたいですし、新しいHCともそういう部分を積み重ねていって良いチームを作っていければと思ってます」
来シーズンは新たに森高大HCがチームを率いることが決まっている。指揮官交代には仕切り直しのイメージを抱いてしまうが、選手は喜多川を含めて8人が残留。プレーの連係や意識面の継続性という点はアドバンテージになるだろう。B1からB.ONEに舞台を移すのは越谷とファイティングイーグルス名古屋の2クラブだけとあって、アルファメイトは当然ながら優勝を期待し、クラブとしても優勝に関しては一定の使命感があるに違いない。アウォードショーにはともにB1昇格を味わった1歳上の菊地祥平が功労賞の表彰で同席していたが、40歳の喜多川はまだまだやる気満々。越谷が次なるステップを踏む上で、貴重な役割を果たしてくれそうだ。

「一緒に苦労したメンバーも多く残って、チームを構築していく上では良いんじゃないかと思いますし、竜三さんの厳しさを持ちながら、新しいHCと一緒に初代B.ONE優勝を目指してやっていきたいという気持ちで、モチベーションはすごく高いです。僕も年齢を重ねていって、年齢の近い人たちが引退するのは、学生の頃から知ってる分寂しい気もするんですけど、ジェフ(・ギブス)が言ってた『年齢はただの数字にすぎない』という気持ちを持って、体が動く限りはプレーしていきたいですし、リーグには僕より年齢が上の選手もまだいるので、そこを目指して頑張っていきたいです」
文・写真 吉川哲彦











