移籍してきたばかりだというのに今シーズンは“副キャプテン”という重職を任された。伊佐勉HCからはコートの内外でのリーダーシップを期待されている。「千葉という強豪チームの文化を含め経験してきたことを伝えてほしいと言われています。できることは何でも全力でやりたいですね。もちろん目標は優勝ですが、そのためにはまず東地区で他のクラブから一目置かれる雰囲気というか、存在感を示さないとなりません。必要なのはそれに見合う結果を出すこと。改めて副キャプテンの責任も感じています」
柏に引っ越してきたのは8月の末。「新しい環境でも明るくサポートしてくれる妻には感謝しています」と笑いながら、風呂上りの入念なストレッチ、そのあとに日記を付ける習慣は変わらない。「日記はプロ2年目ぐらいから付け始めたんですが、その日の練習やトレーニング、また試合で感じたことなどを忘れないように書きます。時々読み返しては自分の変化を辿ったり、これからやるべきこと確認したりします」。31歳で立った人生3つ目の分岐点。その日のことを石井は日記にどう記したのだろうか。高校で辞めるつもりだったバスケットを続け、大学で精度の高いディフェンスを叩きこまれ、「後はない覚悟」で会社を辞め、関東実業団のチームからプロ選手となり、「不可欠な存在」と言われたチームを離れ、今年7年目のシーズンを迎える。そんな石井の姿を追っていると、ふと武者小路実篤の言葉が浮かんだ。
『この道より我を生かす道なし。この道を歩く』
10月5日、SR渋谷の黄色いユニフォームを身に付けた石井は“初めての敵”千葉ジェッツに挑む。
サンロッカーズ渋谷 #27 石井講祐
この道より我を生かす道なし
part1「自分がやろうと決めたことは最後までやり通す」
part2「貪欲にゴールを狙うガムシャラな自分を出していきたい」
文 松原貴実
写真 安井麻実