毎回のように選手の引退興行となる側面を持つのがWリーグオールスターの特徴。オリンピック銀メダリストにもなったスターであること、シーズン開幕前という早い段階で引退を宣言していたことなどから、今回は宮崎早織(ENEOS)がクローズアップされたのも必然の流れだ。しかし、これが最後の表舞台となったのは宮崎だけではない。シーズン終了後に引退が発表された知名祐里も、スポットライトを浴びるのはこの日限りだった。

オールスターが開催された5月3日は、奇しくも知名の誕生日でもあった。第3クォーター残り4分を切った頃、知名が入ったチームシリウスのオフェンスのタイミングで突然バースデーソングが流れ、コート上の他の9人はゴール下のスペースをガラ空きにした。知名がシュートを決めると、ベンチから出てきた町田瑠唯(富士通)が大会協賛企業のお菓子の詰め合わせをプレゼント。本人は何も聞かされていなかったらしく、「本当に何も知らなくて、サプライズで嬉しかったです。25歳という節目の年齢をこういう日に迎えて、皆さんにお祝いしていただけて幸せだなって感じました」とはにかんだ。
コンテストを見守る段階から試合終了後のコート一周とフォトセッションまで笑顔が絶えなかった知名は、「私自身最後のオールスターだったんですけど、会場も一体となってすごく楽しんでくれて、最初から最後までお客さんと一緒に楽しめたと思います」と心の底から嬉しそうにこの1日を振り返った。選手ではシャンソン化粧品シャンソンVマジックから唯一の出場だったが、観客席にはチームメートの佐藤由璃果や家族、友人の姿もあり、知名はコート一周の後に観客席を駆け上がって言葉を交わしている。
「シャンソンのみんなの分も楽しもうというか、せっかく出るオールスターなので自分らしく笑顔でやれたらなって思ってました。佐藤さんは来てくださるって聞いてましたし、沖縄から家族と友達も私の最後のユニフォーム姿を見に駆けつけてくれたので、会いに行かせていただきました」

知名は高卒でWリーグに飛び込み、6シーズン全てをシャンソン化粧品で過ごした。ファンにとってはたった6シーズンでも、本人にとっては中身の濃い時間。バスケットをやっていたからこそ、充実したものになった。
「長いようであっという間の現役生活だったんですけど、バスケットを始めて15年、Wリーグで6年、バスケットを通してたくさんの方々に出会わせていただいて、なおかつたくさんのことを学ばせていただけて、かけがえのない人生の思い出というか宝物になったなと思います」
近年は女子の選手も引退後の選択肢が増え、指導者としてバスケット界に残る人が増えているが、知名にはバスケットに携わり続けようという意志は特になく、地元・沖縄に戻る予定も今のところはないという。「次が決まってるとか、もうバスケットが嫌になったというのは全くなくて」、自身と向き合った上で引退の道を選んだ。
「次のシーズン、自分がもう1回頑張るとなったときに、今まで以上に頑張れるかって考えたんですけど、今までの自分を超えられる気がしなくて。100%でやれないならやりたくないと思ってたので、ここで自分の気持ちがそうなってるということはそこまでかなと思って、自分の心の中で整理がついて決断したという感じです」
インターハイベスト8という実績はあるものの、県立西原高は全国常連の名門校というわけではなく、知名自身もサイズや身体能力に恵まれたタイプの選手ではない。世界と渡り合う選手がせめぎ合うWリーグに、覚悟を携えて飛び込んだであろうことは想像に難くないが、必死に取り組む日々の中で、応援される立場であることを自覚し、自身を温かく見守る人たちへの感謝がモチベーションへと変わっていった。











