うちの猫は犬だ。
芸を仕込めば「待て」を覚えるし、物を投げれば咥えて持ってくるし、挙げ句の果てには猫らしく「ニャア」などとは鳴かずに「ウワォン」とか言い出す。
どうも猫らしさに欠ける。
尻をポンポンと軽く叩いてやると、気持ちがいいのか下半身を突き上げて変態性をあらわにしてくるのだけど、ご機嫌のあまり尻尾を左右に振り出すクセがある。
猫は不機嫌なときに尻尾を垂らして左右に振る仕草をするようだが、下半身とともに高く上げられたその尻尾には不快感のかけらもなく、おかわりを求めて尻を差し出してくる。
その振り方はね、犬がやるやつだよ。
あと飼い主にケツ向けるな。
それから異様にデカい。
ちょっと前まで6kgあって、骨格もしっかりしてるので、もはや中型犬に近いフォルムだった。
ショッピングモールにペットショップがあるとつい子猫を見に立ち寄ってしまうが、ちょっと前に覗いたときにいたアメショのお父さんは4kgって書いてあったぞ。
1.5倍ってどういうことだよ。
平均的な成人男性が170cmくらいとしたら、1.5倍すると255cmになっちゃうからな。
リヴァイ兵長に絶滅させられちまうぞ。
しかしそこまでデカくなるにはれっきとした理由があって、とにかく食欲がひどい。
あればあるだけご飯を食べてしまうので、みるみるうちに大きくなってしまった。
放っておくと同居猫である三毛の分まで強奪してしまうため、食事中は隔離施設が必要になる程だ。
食事量を計り、回数を分け、三毛が残した分を食べさせない政策を施行し、獣医の助言を受けて長期的構想で緩やかなダイエットを実施した結果、いよいよ4kg台のスリム猫も夢ではないというところまでやってきたが、当然ながらというべきか、食に対する執着は増す一方だ。
僕が休日に1日中在宅しているときも、アメショはほとんどの時間を寝室などで寝て過ごしている。
だがどういうわけか、日に4度の食事の時間がくると時計を見ていたかのようにリビングにやってきてケツを向けてくる。
“ご主人、メシの時間であろう”とでも言わんばかりに。
時間の概念は人間が便宜的に作り出した、自然界には存在しないものだと思っていたが、猫界にも適用されるらしい。
しかもうちのアメショは業界の中でもとりわけ時間に厳しいタイプらしく、休みの日の朝寝坊など決して許してはくれない。
少しでも定刻を過ぎようものなら枕元にやってきて前足で飼い主の髪をすくい、噛みちぎって制裁を加える。
この朝の時間帯の彼は「すくいのかみ」と呼ばれ、崇め奉られている。