我は猫である。名は既にある。
王の中の王であるアメリカンショートヘアーの純血種にして、天上天下における孤高の存在。それが他ならぬ我である。
此度は諸君らに、この唯一無二の王たる我について知る権利を与える。心して聞くがよい。
我がこの世に生を受けたのは今より3年前。
生まれたころの記憶などとうの昔に消し去ったが、むやみに背が高く、足の短い男が迎えに来たことだけは憶えている。
男は一目散に我の下へと歩み寄り、まじまじと眺め、さらに係の者を呼びつけて抱っこさせてくれと懇願した。
だが我は抱っこをよしとしない。
地に足がつかぬことに不安を覚えるのだ。
しかし男はそんな我の心境などお構いなしに抱きかかえ、断りもなしに頭を撫でてくる。
これはのちに判ったことだが、男はなにかの運動選手であるらしく、その持ち前の腕力を存分に発揮して我を拘束した。
我は抵抗の意を示し、このような不敬な輩、許してはおけんと憤ったが、いくら暴れようとも逃れられぬほどに男の胴体は長く、そして足は短かった。
この日より、男は我に忠誠を誓う従僕となる。
実に大義なことだ。
我が従僕は大変によく尽くしてくれている。
じゃらしの腕前はなかなかに見事なもので、幼い頃は毎晩のようにヘトヘトになるまで遊んでやったものだ。
しかし疲れてくると、じゃらしをただ放り投げて取ってこさせるシステムに変えてしまうのはどうかと思う。
それに奴は少し、几帳面すぎるところがある。
城に迎えられてしばらくの間は思うまま食事をとることができたが、我の体重が増えてくるのを見かねて、月1の体重管理と厳密な食事制限を始めた。
食事の量を正確に計り、回数も日に4度に分け、おやつも自由に食べさせない。
これでは王としての威厳を保てようはずがない。
挙げ句の果てには、食事前に必ず「待て」などという掛け声をかけてきて、5秒間静止することを要求してくる。
「4」くらいでたまらず前足を片方上げてしまうと、「はい今4.5でしたやり直し」とか言ってくる。
正直ちょっと頭がおかしいと思う。
我は猫である。
犬ではない。