女子バスケット日本代表の、オリンピック予選(以下、OQT)に向けた強化合宿が始まっている。日本はすでにオリンピックへの出場権を持っているのだが、OQTには出なければならない。裏を返せば、OQTで負けてもオリンピックには出られるのだ。しかしトム・ホーバスヘッドコーチは「いつもどおり、負けたくない。ベストチームを作っていく」と言う。そのためにホーバスヘッドコーチは4人の“刺客”を送り込んできた。
シューティングガードに日立ハイテククーガーズの北村悠貴、トヨタ紡織サンシャインラビッツの加藤優希と東藤なな子を招集し、センターには2017年のアジアカップ以来となる大﨑佑圭を試すことにした。
サプライズ選出となった大﨑だが、チームはその間、“ポスト大﨑”を見出そうとしていた。しかし最後までその座をつかみ取る選手は現れなかった。一方の大﨑もその間に出産を経験しており、今回の日本代表復帰は大きなチャレンジである。昨年11月におこなわれたプレOQTでの吉田亜沙美同様、彼女もまたトライアウトの身なのだ。結果を出せなければ、OQTのコートに立つことさえできない。
「(オリンピックでの目標である)金メダルに向かって、“遊び”の時間は終わったよ。ここからまじめにいくよ」
ホーバスコーチの言葉からは本気度が伝わってくる。
シューティングガードに3人の選手を招集したのは、そのポジションこそが今の日本代表にとってレベルアップすべきポジションだからだ。
「これまでベンチからのシューティングガードでは林(咲希)がいい仕事をしてきた。でもアメリカにも、オーストラリアにも、スペインにもシューティングガード、スモールフォワードでフィジカルなプレーヤーがいる。東藤も北村も加藤もフィジカルなプレーができる選手たち。(赤穂)ひまわり、林に次ぐ3番目のシューティングガードとして特別な仕事ができる選手が必要だ」
そしてホーバスヘッドコーチはこう言い切る。
「いい仕事をしたら、最終メンバーに入れるチャンスはあるよ」
2年前のワールドカップで本橋菜子が期待に応え、昨年のアジアカップで赤穂がチャンスをモノにして、ともに主要メンバーへと格上げされた。プレOQTでは宮下希保が大きくステップアップし、ポジション争いの一角に名乗りを上げている。
コンペ(競争)が好きだと言うホーバスヘッドコーチだけに、国内リーグが終わった4月以降にも最後の選考レースもおこなうだろう。
しかし実戦の場としては今回のOQTがオリンピック前におこなわれる最後の国際ゲームである。しかも対戦相手はオリンピックの出場権がかかるOQTに全神経を注ぎ込んでくる。オリンピックの本戦以上に過酷なゲームになるかもしれない。そう考えるとOQTのメンバーがオリンピックの最終メンバーに最も近いと言える。
出場権を左右しないOQTだが、実は今大会こそが選手にとっても、チームにとってもオリンピックに向けた大きな試金石なのである。
文・写真 三上太