2005年に現役を退き、コーチングキャリアが20年を超えた平岡ACにとっても、Wリーグは未知の世界。Bリーグよりも細部を突き詰めるWリーグだからこその副作用のようなものが働いていることを、平岡ACは感じていた。そこには、良くも悪くも真面目という東京羽田の選手たちの気質も関係していたのかもしれない。
「最初は戸惑いだらけでした。『ルールは?』というのは選手から必ず言われます。確かにチームルールはあるんだけど、ゲーム中はルール通りにいかないことのほうが多いから、ルールを全部教えてしまったら対応できなくなってしまうし、実際今までもそれはゲーム中にいっぱいあったんです。単純に、ボールが近くにあったらみんなで守りましょうとか、大まかなルールを伝えると男子はできるんですけど、女子は『今のは私じゃないよね』ってなっちゃうことがある。でも、バスケットってボール1つをみんなで守って、ボール1つをみんなで協力し合ってリングに入れるスポーツでしょ? 自分のマークマンにやられたくないからその選手に張り付いちゃう人がいるんですけど、目の前を通過してるんだから、ちょっと手を出すくらいはできるのに、それをしない。本来自分のマークマンじゃないんだけど危ないから自分が止めにいきました、みたいなことは女子にはないというか、ヴィッキーズにないだけなのかもしれないけど、セオリー通りにしか動けないというのがありますね。いざというときって、やんちゃな選手のほうが良いプレーができたりするじゃないですか。これは萩原さんにいつも言ってるんですけど、流れの中でプレーするのが一番。今日だって、追い上げたときは走って、流れの中でたたみかけてる。ああいうのが一番強いですよ」

これに近いことは萩原HCも指摘したことがあった。それは11月29日のシャンソン化粧品戦、勝つチャンスがありながら5点差で落としてしまった試合でのこと。シャノン・ティアラ・フルーカーのペイントアタックが効いていたばかりに、フルーカーにパスを回すことにこだわってしまい、フルーカーへの警戒を強めた相手のディフェンスの変化に臨機応変に対応できなかった。Wフューチャーであれば力技で解決できても、Wプレミアでは通用しないのが現実だ。
「相手はシェーン(フルーカー)にボールを入れさせないように、ボールマンにプレッシャーをかけてきて、それならドライブで抜いちゃえばいいんだけど、無理にシェーンに入れようとするからミスが出る。人任せにしてるつもりじゃないかもしれないけど、困ってる人がいるのにボールから離れていって、自分がボールを受けたくないようにも見えたんですよ。自分がゲームを決めるくらいのメンタルじゃないと、こういうゲームもなかなか勝ちきれない。大事なのはゲームを読む力で、もちろん私たちが戦略・戦術を立てて指示を出すんですけど、プレーするのはコートにいる5人。『オーさん(萩原HC)にはこう言われたけど、私の判断でこっちを選びました』という主体性のある選手が増えると、チームも変わってくると思うんですよね。プレミアだと、戦術通りにできたとしても相手はそれを上回ってくるので、さらにもう一段階上にいくために、自分の責任においてプレーを遂行していく大胆さや勇気が必要だと思います」

ここまでの話を聞く限りでは、平岡ACは東京羽田の選手に対する評価があまり高くないかのようにも見えるが、ポジティブな印象も受けている。Bリーグでは勝者と敗者のコントラストがくっきりと浮かびがちで、敗者が笑顔を見せると心ないファンから批判されることすらあるが、Wリーグはむしろ、選手に笑顔がないとファンに心配されてしまうことがある。Wリーグの中で最も地域との結びつきが強い東京羽田には、平岡ACも大きな可能性を感じている。











