「試合が終わった瞬間に、今年はコートに立てて良かったと思いました。去年出られなかった分、今年はしっかり仕事してプレータイムを増やせるようにと思ってやってきました」と高田が言えば、梅沢も「去年はコートに立てなくて、外から見ていて悔しかった。今年は見る側ではなくコートに立ってプレーできたことに感謝していますし、優勝できて嬉しかったです。去年の悔しさをコートにぶつける気持ちでプレーしました」と、今大会に賭けるモチベーションは2人とも相当に高かった。
また、「ユラさん(宮崎)とは違うタイプのガードとして、落ち着いてゲームメイクしてチームに貢献したい」(高田)、「パワープレーが強みなので、安心してパスを入れてもらえる選手になりたい」(梅沢)とそれぞれにチームに必要とされる選手でありたいと決意。さらに高田は、「3年目でこんなに長く試合に出るとは思っていなかったんですけど、自分らしさを出せたと思うし、去年の分も楽しんでプレーできました」とコートに立つ喜びも語った。2人が安定してコートに立ち、そのポテンシャルを発揮すれば、ENEOSはここからさらにその強さを増していくだろう。
そして、その2人から刺激を受けてきたのが渡嘉敷だ。梅沢は皇后杯も含めて昨シーズン後半を棒に振り、高田に至ってはシーズン全休。膝の靭帯断裂という同じ境遇に立たされた者として、渡嘉敷は大活躍を見せた2人の姿に感極まる様子を見せた。
「一緒に頑張ってきたので、他のみんなよりも2人に対して思うところはある。自分より先に手術して、自分より先に復帰した姿を見て自分も頑張れましたし、今日たくましい姿を見ることができて、ホッとしていると同時に負けていられないなとも思います」
渡嘉敷は、優勝決定直後のインタビューで、大勢の観衆を前にこうも語っている。その声もやはり涙交じりの声であったことと、桜花学園高時代から15年来の相棒である岡本もそのインタビューの間に涙を流し続けていたことを付け加えておきたい。
「去年優勝したときに『来年は決勝の舞台にみんなで立とう』って話をして、今日本当に立てたので最高です。この1年間たくさんの人に支えられて、プレーヤーとしても人としても強くなれた。この会場にいる人、自分の復帰を待っていてくれた仲間たち、そしてWリーグでライバルとして戦ってくれる皆さんがいるから、自分はコートに戻ってこられたと思います。本当にありがとうございます」
過去の優勝インタビューでは目一杯に声を張り、大きく手を振って歓声に応えていた渡嘉敷が噛みしめるように言葉を発する様子からは、その想いの強さがにじみ出ていた。エースが悲壮なまでの覚悟を背負ったENEOSが頂点に立ったのは、必然だったのかもしれない。どんな逆境も進化の材料に変えることができる、それこそがENEOSの強さの最大の秘訣なのではないだろうか。
文 吉川哲彦
写真 JBA