part1「常にゴールを狙うポイントガードとして」より続く
貫くことでリズムを取り戻していく
積極的にシュートを狙うことで、これまでの日本には少なかったポイントガード像を確立している本橋菜子。そのスタイルは日本代表のみならず、所属の東京羽田ヴィッキーズでも遂行している。
「ただヴィッキーズでは、そこでシュートが決まればいいけど、決まらなかったときに立て直すのがちょっと難しいなと感じるところがあるんです。そこは自分でコントロールしています。打って外れても全然何も言われないし、チームでも許されてはいるんですけど、そこは悩むところです」
日本代表であれば、本橋以外にも得点力の高い選手がインサイド、アウトサイドを問わずにいる。東京羽田ではそうした選手が限られてくる。個々が持ち味を発揮しながら、昨シーズンのWリーグでは過去最高の6位になった東京羽田だが、得点に限れば、本橋がチームトップの1試合平均14.86点をあげている。リーグの得点ランキングでも8位に入る成績だ。自分が崩れたら、チームも崩れてしまうのではないか。そんなふうに考えてもおかしくはない。
「周りとの得点のバランスを考えようとした時期もありました。でもそれを考えてしまうと、自分自身がうまくいかないとわかったんですね。だからそこは切り替えて、ゲームコントロールももちろん必要なんですけど、自分のリズムで積極的に得点を狙っていく。そういうときは自分自身がうまくリズムに乗れるので、そこはブレずに、ひとつひとつのチャンスをしっかり見極めてやっていきたいなと思っています」
選手が崩れていくのは、えてしてメンタルでの問題が多い。本橋のような得点力のある選手であれば、シュートを外し続けることで「まずい」と思ってしまい、そこから負の連鎖が始まっていく。もちろん人間である以上、そうした感情が生まれることは仕方のないことだが、トップアスリートはいかにそれをコントロールするかを問われる。本橋の場合であれば、そこでゲームをコントロールしようと切り替えるのではなく、シュートを打ち続けることで負の感情を置き去りにし、失われかけたリズムを取り戻していくことが重要になる。簡単なことではない。しかしだからこそチャレンジのし甲斐もある。
もう少し余裕を持ったプレーができたらいいな
結果に左右されず、攻撃的なスタイルを貫こうとしている本橋だが、それがポイントガードとしての理想形ではないと明かす。そしてある選手の名前を口にする。
「たとえば吉田(亜沙美。JX-ENEOSサンフラワーズ)さんだったら、たぶんシュートを狙えと言われたら、いくらでもシュートを狙えると思うんです。実際にシュートも入るので、どんどん得点を取りに行こうと思えば行けると思うんです。そうした力を持ったうえでゲームコントロールをしっかりしている。いくらでも自分の得点チャンスはあるのだけど、そこではなくて、選択して一番いいチャンスを狙っているんです。私はそこまでの余裕がなくて、自分の得点チャンスを狙うことが一番の優先になっているので、そこは違うところかなと思っています。もうちょっと余裕を持って、いろんなことをよりよく判断をできるようになっていけば、チームメートとももっと合わせようという意識が増えてくるだろうし、やりやすいんじゃないかなと思っています」