なるほど、これもキャプテン同様、ポイントガードにしかわからない楽しさかもしれない。次に何をコールされるか、他の4人はわからない。もちろんヘッドコーチがコールをするときもあるが、JX-ENEOSにしろ、日本代表にしろ、原則的にはポイントガードがプレーコールをおこなう。次はどのプレーで攻めるの? そう思っているチームメートをきっちりと動かし、得点につなげていく。自分が得点しなくても、アシストをしなくても、それがきれいに決まればポイントガードの頭脳による得点と言えなくもない。
そこにはチームメートとの信頼関係も横たわってくる。
そして、そこにもまた吉田はキャプテンを経験した意味を見出している。
「キャプテンっていう責任を負うときに、自分のことだけを考えているキャプテンについていきたいかっていうと、絶対にそうじゃない。自分がキャプテンじゃなかったときにどういう人についていきたいかを考えて、次に自分がキャプテンになったときに『リュウさんならついていきたい』って、どうやったら思ってもらえるか。どういう振る舞いをしたらいいのかを考えたんです。チームメートと一緒にいるのは練習が一番多くなるわけで、じゃあ、練習中に一番声を出し続けることもひとつだし、練習から絶対に手を抜かないとか、そういうところから始めていこうと思ったんです。もちろん試合でも。チームが『この人のためなら頑張りたい』って思ってもらえるように、自分が一番頑張ろうって。自分のプレーがうまくいかなくてフラストレーションを溜めるのって、それこそ自分だけの感情じゃないですか。キャプテンのときはそれじゃダメ。自分もしんどいけど、今はチームのことが一番だから、そんなことを考えている場合じゃないっていうふうにシフトチェンジできるようになったのは、すごく大きかったなってすごく思います」
練習中から声を出し、手を抜かず、この人のためならと思われればこそ、試合のコートでコールしたプレーはスムーズに動き出す。
ポイントガードにせよ、キャプテンにせよ、責任も負担も大きい。しかしそれを経験したからこそ気づける何かがある。
part3「何をやっていいか、まったくわからなかった」に続く
文 三上太
写真 安井麻実