「コミュニケーションを取って、どの選手がどういうプレーを得意とするのかを知る。逆に『あ、これは不得意なんだな』っていうのを見つけてあげることもポイントガードの仕事だと思っています。見てわかることってたくさんあるから、やはり“気づける”ってことがまず大事かな。そのためにポイントガードとしては常に目を配っていなければいけないなって思っているんです」
いかに気づくか。それこそが吉田の考えるポイントガード論の“序章”である。
むろん四六時中、チームメートのことを監視することはできない。吉田自身、必要以上にコミュニケーションを取るタイプでもない。
「練習後のコートの外で、なんか元気がないなって子がいたとしても、私はあまり声をかけないかな。元気がないときって話しかけてほしくないときもあるじゃないですか。だから話しかけたりはしないけど、ちょっとしたスキンシップ、(肩や腰あたりを)ポンポンってしたりとか、『最近、体はどう?』って聞くくらい。『どうしたの? 話聞くよ』みたいな感じにはしないですね。言いたいときは自分から勝手に言ってくるから、それまで待っています」
ドライと思われるかもしれない。しかし、吉田は自分が同じような立場になったときにどう思うだろうかと考える。完全に放っておかれるのも好きではないが、一方で必要以上に近づいてこられても対処のしようがない。なぜなら落ち込んでいるのは他ならぬ自分なのだから。助けてくれようとする気持ちを受け止めながら、一方でその泥沼から抜け出さなければならないのは自分自身である。自分で抜け出せなければ、その先も切り拓けない。
そう考えることによって、吉田は自らを世界と互角に戦えるまでに高めてきた。その自負もある。
チームメートだから常に一緒にいなければならない。手と手を取り合って、常に仲良くしていなければいけない。そんな言葉に縛られるのではなく、もちろんチームメートとは仲良くするのだが、一定の距離を保ちつつ、その目をチームに注いでいく。それが吉田亜沙美の流儀なのである。
part2「キャプテンをやったことが大きかった」へ続く
文 三上太
写真 安井麻実