── さて、今回Wリーグオールスターのポスターを担当されました。『はじけろ女子』のコピーにぴったりの躍動感あふれる作品ですね。
これは『ECHOES』を読んでくださった某チームの方がWリーグに橋渡ししてくださり、それがきっかけでいただいた仕事です。Wリーグは高校生のころから知っていますし、今もよく見ていますし、今回のご縁はすごくうれしかったですね。でも、同時に感じたのはものすごいプレッシャー。1人の選手を描くうえでファンの方が抱いているイメージを裏切ってはいけない、かといってただの似顔絵になってもいけない。リアルとマンガのバランスをどう取るかがとても難しかったです。
── リアルとマンガのバランスは絶妙ですよ。たとえば渡嘉敷来夢選手がもしマンガに登場したとしたらこんな感じなんだろうなあと思います。
ありがとうございます。そう言っていただけるとちょっとホッとします(笑)。選手の皆さんにも喜んでいただけたらうれしいですね。
── それと歩さんは『ECHOES』の 長編版である『BREAK THE BORDER』の続きを描いていくためにクラウドファンティングをスタートされました。その経緯を聞かせてください。
『ECHOES』はもともと長編を構想して描き始めたマンガで、出版して約1年後にその長編版ともいえる『BREAK THE BORDER』の連載が始まりました。僕としてはずっと長く続けていきたい作品でしたが、1巻で打ち切りになってしまったんです。ショックでしばらく描くのを休んでいたんですが、そんな自分に「喝」を入れてくれたのはやっぱりバスケットでした。たまたま見に行ったSOMECITYにすごく刺激を受けたんです。輝いている選手たちに圧倒されました。そのとき「自分は1番やりたいことをやっているはずなのにどうして心が死んでいるんだろう」と思ったんです。
そもそも『ECHOES』の出発点はいろんな壁を乗り越えながらバスケットに向かっていく高校生の姿を描くことで多くの人を元気づけたいという気持ちでした。自分自身が部活を通して経験したこと、感じたこと、またトランスジェンダーとしての視点も織り交ぜながら青春群像劇を描きたかった。SOMECITYを見て圧倒されながら、その帰り道に思ったのは、もう一度原点に戻って『BREAK THE BORDER』の続きを描いていきたいということです。