── 長い選手生活の間にはたくさんの『悔しさ』も味わってきたと思いますが、その中でもリオ・オリンピックの最終メンバーから外れたときの悔しさは格別だったのではないですか?
うーん、あのときは悔しさというか、とにかくショックが大きかったです。メンバー発表のとき最初にリュウ(吉田亜沙美)の名前が呼ばれたので、一瞬「キャプテンが最初なのかな」と思ったんですが、あっ違う、年齢順だとわかって、その瞬間頭の中が真っ白になりました。みんなのことは応援したいけど、その中に自分はいないんだと思うとやっぱり辛かったです。これは自分の力が足りなかった結果なんだと受け止めるまで少し時間がかかって、しばらくはボールも触れませんでした。でも、オリンピックでみんなが頑張っている姿を見たとき、ああこの12人だからここまでできているんだと素直に思えたんです。もう全力で応援しました。全力で応援したくなるようなすばらしいチームだったと思います。
── そして、新しいシーズンが始まりました。また1年走り続けるわけですね。
そうですね。シーズン前のトレーニング時期には「このトレーニングを続けるのはもう自分には無理、もう今年で最後にしよう」と思うんですよ。ほんとにそう思うんです。ところがいざシーズンが始まると「あそこはもっとできたはずだ」とか「できなかった自分が悔しい」という思いが湧いてきて、このままでは終われないなと思っちゃうんですよねえ。それでまた1年頑張ってみようと……。思えばその繰り返しでここまで続けてきたような気がします。
── 体力の衰えを感じて、若い選手が羨ましいと思うことはありますか?
ありますよ。それはもうしょっちゅうですね。疲労の回復度やスピードの衰えは自分が1番わかりますから。自分が20歳に戻りたいとは全然思わないんですが、バスケット選手としての若さは羨ましい。毎日、練習のたびに羨ましい~と思っています(笑)。
── でも、ベテランにはベテラン選手としての仕事があります。
ベテランというのはポイント、ポイントでしっかり仕事が全うできる選手。それがベテランの存在価値だと思っています。私が若いころにベテランと言われていた人たちは本当にすごくて、圧倒的存在でした。それに比べ、自分はまだあの域に達していないと思うんですよね。越したのは年齢だけで(笑)。そう考えると自分がベテランと呼ばれるのは申し訳ないというか、まだまだだなという気持ちになります。
── 1年後、5年後の自分を考えることはありますか?
私も年々引退が近づいているのは事実ですが、それから先のことはあまり突き詰めて考えたりしないんですよ。結婚はいつかしたいと思ってるし、できれば子どももほしいと思いますが、それにはまず相手を見つけないといけないし(笑)のんきなのかもしれませんが、結婚に対してあまり焦りはありません。それより今考えるのはバスケットのことですね。このリーグでいかにチームに貢献できるかが自分にとって目下の最優先事項です。
「16年目の自然体(延長戦)」に続く
文 松原貴実
写真 安井麻実