part1より続く
プラス思考でたどり着いたファイナルの舞台
王新朝喜は、今秋からはじまる新シーズンで三菱電機コアラーズの一員として10年目を迎える。ルーキー時の2010-11シーズンは下部となるW1リーグ(※2012-13シーズンより廃止)だった。Wリーグへ昇格させる期待のビッグマンとしてやる気に満ち溢れていたかと思いきや、「もちろん昇格したいですが、私の力でどうにかできるとは思っていませんでした」。しかし、試合に出たい気持ちは強かった。
ひとつ年上のセンター、藤井香苗がやさしく接してくれたことで居場所を見つける。「コートに入ったらライバルでしたが、普段は仲が良く、すごく良い先輩でした。私の性格上、もし恐い先輩だったらここまで強くなれなかったと思います」という環境が功を奏し、先輩たちのためにもがんばることを誓う。その後の努力が実り、センターポジションを勝ち獲った王がW1リーグ開幕戦の先発を任された。順当に勝ち進み、日立ハイテククーガーズとの入替戦へ進む。1勝1敗にもつれて迎えた第3戦。王は29点を挙げ、83-66で勝利し、終わってみればWリーグへ引き上げる原動力になっていた。
当時を振り返れば反省点ばかりだったが、「練習から全てが勉強であり、新しいことを理解しようとしていたことがすごく楽しかったです」と充実した日々を送る。トップリーグに上がると「上位チームとの対戦は何も失うものはなかったです。試合前は緊張と不安もありましたが、試合がはじまればチームメイトのことしか考えなくなり、相手を意識することもなくなったことも良かったです。それで勝ったときには、みんなで喜びを分かち合う快感がすごく好きでした」と常にチームのことを考え、仲間たちとともに戦っていることに喜びを感じていた。Wリーグに上がっても二桁得点を挙げ、2013-14シーズンにはキャリアハイとなる平均16.24点を記録する。
「みんながボールを持ったら私を見てくれるから、私も思いきってポジションを取ることができます。その信頼関係があるので、私の得点はみんなで作った得点と思いながらプレーしています」
Wリーグに昇格したシーズンに5位と好成績をおさめる。しかし、その後もほぼ変わらぬ順位が続き、ベスト4の壁を破れずにいた。チーム内でもその現実について話し合ってきたが、他のチームの選手から「三菱はすごく強いよ。もっと自信を持った方が良いよ」と言われたことでその原因に気付かされる。
「同じメンバーで何年も一緒に戦ってきたことでお互いに何を考えているか、どうして欲しいかはもう分かっています。それでも分かっているからいいやではなく、しっかりと言葉に出してみんなで確認し合うことを昨シーズンは徹底しました。そうすることで話す内容も変わり、みんながプラス思考になったんです。きっとそれが自信につながっていったと思います」