スポーツにケガはつきものである。むろん、ないに越したことはないのだけど、どうしたって、どこかで起こってしまう。そんなときはまず、当然のことながら、病院に行く。病院で治してもらう。大きなケガであれば手術が必要なケースもある。
そうして治療してもらったから、手術が成功したから、それでおしまい、即座に競技に復帰へ……。こちらもスポーツをしている人ならおわかりだろうが、そんなはずはない。リハビリをして、スポーツができる身体にしてから、競技へと戻っていく。
しかし2006年に診療報酬が改定され、病院でリハビリのできる日数が制限されるようになった。スポーツ選手に起こりやすい「運動器のリハビリ」であれば150日である。些細なケガであれば、その日数でも問題はないのかもしれないが、ヒザや股関節、アキレス腱などの大きなケガになると、150日では足りないこともある。むしろ、いい具合に回復してきていたのに、日数に到達したところで打ち切られてしまったら、元の木阿弥になりかねない。
選手もそこで「ここまで頑張ってリハビリしてきたし、もう普通に練習していいでしょ」などと勝手に判断をしたら、再受傷のリスクは高まるばかりだ。
リハビリをしながら、リコンディショニングをして、競技復帰への道筋をしっかりつける──それらを1つのパッケージにして、選手たちをサポートしたい。そう考えているスポーツジムがある。神奈川県川崎市に居を構える「FOCS GYM(フォックス・ジム)」である。
情報を共有することでよりよい形で競技復帰に導く
代表取締役でCEOの──と呼ぶには、彼の実績を知り、その “S” ぶりを見聞きしている筆者としては、いささか不釣り合いだと思ってしまうのだが、事実なのだから仕方がない──北本文男は、さまざまな競技で、ジュニア世代からトップアスリートまでを指導するストレングス&コンディショニング(S&C)コーチである。バスケットで言えば、富士通レッドウェーブや東海大学、NKK、デンソーなどさまざまなチームを指導してきた。活動の場は日本だけに留まらず、韓国女子バスケットボールリーグ(WKBL)のKBスターズもトレーニング指導し、リーグ優勝に導いている。
その北本が、FOCS GYMの一番の特長と挙げるのが治療院の併設である。建物こそ違うが、ジムから40メートルほど歩いたマンションの一室に「フォックス鍼灸治療室」を構え、専門のトレーナーを常駐させている。退院してきた選手たちはそこで治療を受けながら、ジムで競技復帰に向けた適切なリハビリ、もしくは補強トレーニングを受けられるのである。
選手だけではない。一般の人たちでも、日常生活のなかで思わぬ大ケガに見舞われることはある。FOCS GYMではそんな人々が、元どおりの生活スタイルに戻るためのリハビリやトレーニングを受けることもできる。
一方で巷には「このトレーニングをやれば痛みがスッと消えます」とか、「短期間で現場復帰できます」などといった甘い言葉が浮遊している。しかし何か1つだけをやれば、傷ついた機能が再生するなんてことはありえない。常に担当医師や理学療法士(PT・病院などでリハビリを担当する人)、チームに所属する選手であれば、そのチームの監督やトレーナーとも密にコミュニケーションを取って、その選手自身にとって適切な競技復帰への道筋を、みんなで共有しながら、導かなければならない。
北本が言う。
「選手の競技復帰は、誰か1人でできるものではないし、みんながその選手の状態と情報を共有して、みんなで次のレベルに上げていく。そのためには筋力トレーニングも大切だし、柔軟性も必要かもしれないし、ケガの治療も継続しなければいけない。走れるようになったらスピードを上げられるようにしなければいけないし、バスケットだったら持久力をつけたり、ジャンプも、スプリントも、アジリティーも……と、さまざまな要素が出てくる。それらを必ずウチでできるようにして、チームに戻していく。そういうことをきちんとやりたいと思っているんです」