── 開幕戦のコートに立っているイメージはありますか?
渡嘉敷 そうですね、自分の中では想像しています。それが残り何分なのか、シックスマンなのか、スタートなのかはわからないですけど。ただちょうど1年前にスタンドからWNBAのコートを見ていて、「1年後にあのコートに立つ」って言ったんです。開幕戦はJX-ENEOSのチームメイトも見に来てくれるということなので、いいところを見せられたらなって思っています。
── Wリーグではウォーミングアップでダンクをしていましたが、向こうでもやってやろうという気持ちはありますか?
渡嘉敷 はい。日本より盛り上がるんじゃないですかね? ウォーミングアップでもやっておけば、たとえゲームに出られなかったとしても、「あいつ、ウォーミングアップでダンクをしてたよな」ってインパクトを与えることになると思うので。あ、もちろん試合には出ますけどね(笑)。ただちょっとずつ自分の存在感を出して、アメリカの人たちにもわかってもらえたらなって思いますし、ダンクはそのための1つの武器というか、パフォーマンスとしてやりたいです。
── もちろん試合中も、ですよね?
渡嘉敷 試合中もワンマン速攻でチャンスがあれば、ですね。アメリカでは40分間出続けることがたぶんないと思うので、10分なら10分のプレイタイムのなかで「最大限に飛べ」と言われれば飛べると思います。ぜひ、やりたいですね。
── 個人の目標はありますか?
渡嘉敷 今は開幕スタメンに入ることです。数字については特に考えていません。まだどんなところなのかわからないので…でも開幕でスタートを取るくらいの気持ちでやって、ダメならダメです。でもそういう気持ちでやって、スタートで立てたら、みんなには内緒にして、当日ビックリさせたいです。
── キャンプからダイアン(大西ムーアダイアンまどかさん。渡嘉敷の桜花学園高校時代のチームメイトで、現在はアメリカ・ハワイ大在学中)が通訳でつくそうですね。
渡嘉敷 キャンプの途中からですね。自分が一番慕っている同期でもあるので、本当に心強いです。アメリカ行きが決まる前から、毎日のようにラインをしている仲だし、本当に自分は恵まれているって思いました。ちょうど彼女にとっては夏休みの期間でもあったし。
── 渡嘉敷選手のほうからお願いをしたのですか?
渡嘉敷 通訳を探すにあたって、「誰か友だちいない?」ってトムに聞かれたときに「あ、ダイアン」ってひらめいたんです。バスケも知っている、英語もしゃべれる、日本語もしゃべれる、そして自分と仲がいい。だから、いきなり電話をしました。「ダイアン、ダイアン、ちょっと軽いことを言っていい? 自分、アメリカに挑戦しようと思うんだけど、通訳どう?」って、このノリで話したんです。そうしたら「え、いいよ」って。そのときはまだ彼女も卒業後のことも考えていないときだったけど、「期間的に大丈夫だからいいよ」って言ってくれたんです。8月いっぱいくらいまではいてくれます。
── 話を伺っていると「ちょっと近所に買い物に行く」くらいの、気負いのなさを感じます。
渡嘉敷 そうですね、本当に「ちょっと行ってくるわ」っていう軽い感じなんですよね。だからここに来るまで自分がアメリカに行くっていう感じもしなかったですし、これからアメリカに行くのに、それこそ近所に「散歩に行ってくるよ」っていうくらいの気持ちでいるので、自分でも正直ビックリしているんです。もっと「行ってきます!」「頑張ってきます!」っていう力んだ感じになるのかなと思っていたんですけど、意外と楽に行けるなと…でも寂しい気持ちもありますよ。それでも絶対にホームシックにならない自信はありますけどね。
── どういう自分になって日本に戻ってきたいと考えていますか?
渡嘉敷 英語しゃべれる、自炊が少しできる、3番目にバスケットがうまく…というのは冗談で(笑)、最初にバスケットで成功してと言いますか、それこそ日本代表やJX-ENEOSのプラスになるように、自分がそれらに何らかの影響を与えられるようになって帰ってきたいですね。そしていろんな人に「アメリカに行って良かったね」って言ってもらえるように、プレイ面でもそうですけど、精神面でも何かしらプラスになれる選手になって帰ってきたいですね。
── その間に女子日本代表の合宿もおこなわれています。
渡嘉敷 代表合宿については日本にいるみんなに任せたいと思っています。もちろん日本代表のことを考えないわけではないですけど、まずは自分がアメリカに挑戦するにあたって、いろんな人が協力し、応援してくださっているので、成功して戻ってこなければダメかなって考えています。だから今はアメリカのことを一番に考えて、頑張りたいです。
文・写真 三上太