棄権した大阪学院の思いを背負って挑んだインカレ初試合
関東大学リーグ2部の明星大学は一発勝負のチャレンジマッチで1部の神奈川大学を倒し、第72回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)への切符をはじめて手にする。1回戦は関西3位、大阪学院大学との対戦が予定されていた。しかし、コロナ禍により相手が棄権し、不戦勝で2回戦へ駒を進める。1回戦だけは時間的余裕があり、明星大学も入念な準備をしていただけに「試合をしたかったのが正直な気持ち」という柴山英士監督。それ以上に「大阪学院の方が悲痛だったはず」という思いも背負って、選手たちの気持ちを切り替えさせた。
インカレ初試合の相手は、昨年の準優勝校である専修大学と対戦。新田嵐の鋭いドライブで明星大学が先制する。関東大学2部オータムカップの得点王(87点)&3Pシュート王(38%)となった岡田泰希が、1部を相手にも怯むことなくネットを揺らしていく。守ってはゾーンディフェンスで固め、第2クォーター残り2分、41-44と1ゴール差の戦いを繰り広げていた。しかし、その後は専修大学が圧倒していく。第2クォーター終盤には6点のラン、第3クォーターにも5連続得点を許し、防戦一方となる。69-116、明星大学は47点差で敗れ、2回戦で姿を消した。
前半途中、185cmながらインサイドで身体を張ってリズムを作っていた福田晃平が太股を痛打し、ベンチに下がらざるを得ない状況となる。「福田は縁の下の力持ち的な要素が強い。彼がいなくなるとバランスが悪くなってしまった」と、柴山監督の信頼も厚い大黒柱を失ったことが響いた。
得たものの方が大きかった1部との戦い
3年前、新田やシェッラ・ママドゥが1年のときは関東大学3部で戦っていた。その年に2部へ昇格し、同時に入学してきた岡田や福田が力をつけてきた。今の3年生が主力となり、来年も楽しみなチームである。その中において、3年目にしてはじめてロスター入りを果たし、いきなり先発で起用されたのがポイントガードの加藤嵩都だ。東北生活文化大学高校出身であり、加藤にとってもこれが人生初の全国の舞台となる。
落ち着いたゲームメイクから一気にスイッチを入れ替えて、「一級品のスピード」と紹介されるとおり、電光石火のドライブで得点を奪う。専修大学のキング開や、福岡第一高校で日本一を経験する重冨周希を相手にも臆することなく1on1を仕掛け、抜き去っていった。
チャレンジマッチで神奈川大学と対戦し、12点を挙げた。インカレでの専修大学戦は9点、5アシストの上々の出来と言える。試合後に感想を聞けば、「身体的には相手の方が優っていました。でも、来シーズンへ向けた目標もハッキリ自分の中で持つことができました」と得たものの方が大きかった。強気なプレーで持てる力を発揮する。「高さがあっても、平面では全然負ける気はない。自分の武器をしっかりと磨きながら、来シーズンはもっとプレーの幅を広げていきたいです」と自信につなげていた。課題として、「1部の専修大学は流れがうまくいかなくなって崩れても、大きく崩れることなく踏ん張れる力があります。自分たちはそのときに総崩れしてしまったことが分かりました」というのも収穫である。新田が抜けた来シーズン、チームを引っ張るポイントガードとしての成長にも期待したい。