4年生のために──
先手を取ったのは専修大学だった。エース盛實海翔(能代工業高校)が2連続シュートを決める。対する筑波大学も、キャプテンの牧隼利(福岡大学附属大濠高校)が3Pシュートを決め返した。
「今日はなんとしても4年生のためにという思いがすごく強くて」と菅原暉(土浦日大高校)が言えば、「4年生にはずっとつらい思いをさせてきたので、最後は優勝で恩返しをしたい」と山口颯斗(正智深谷高校)もラストゲームに気合いを込める。井上宗一郎(福岡大学附属大濠高校)は、「このラストチャンスに、絶対に牧さんを優勝させたい」と高校時代からともに戦う先輩たちのために、身体を張り続けた。
増田啓介(福岡大学附属大濠高校)は「ディフェンスからブレイクという筑波の柱となるものをみんなで徹底できた」と、4年間練習してきた自分たちのスタイルを存分に発揮していく。開始5分間で20-10、一気に専修大学を突き放した。
「神がかり的な気持ちの入ったアウトサイドシュート、ディフェンスからブレイクを出し、チームとして信じられないような入りで20点を獲った。今大会の全体を象徴している。4年生や3年生の上級生たちが、チームをまとめて戦っているところの現れである」と吉田健司ヘッドコーチは流れを掴んだ序盤のプレーに対し、選手たちを称える。第71回全日本大学バスケットボール選手権大会(以下インカレ)の男子決勝は91-76で筑波大学が圧倒し、3年ぶり5回目の日本一に輝いた。
日本一になることはこんなにうれしいことなんだ
リーグ戦期間中は、試合のたびに筑波から都内をはじめとした遠方へ電車移動をしていた。しかし、このインカレは宿泊し、選手同士が話す機会が必然的に増える。2年生の井上は、「リーグ戦のときとは気持ちの面でも全く違いました」という変化が、神がかった最初の5分間につながっていた。