クリニックを通じて、「トランジションディフェンスは必然的に4対5となり、ディフェンスが数的不利になります。ベースラインをタッチすることで遅れる選手も必死にディフェンスに戻り、他の4人が一生懸命プレーし続けることが大切です」と、そのフィロソフィーは練習中も垣間見ることができた。
「試合でも練習でも、どんな状況でも同じメンタリティーで選手たちには集まってもらいます。規律あるチームは必ず強くなります」とケーシーコーチは信念を貫く。しかしそれは、大金を手にするNBAでは最も難しい部分とも話している。「私のチームに『バッド・ガイ(マインドの低い選手)』は必要ありません。ミスなどが起きてもホコリを払うように次に立ち向かって行く、誇り高き選手たちに囲まれていたい。フィジカルでも負けず、メンタルも強い選手を求めています」とNBA選手たちのプライドに火をつけながら、チームビルディングを行っていた。
NBAコーチ・オブ・ザ・イヤーを受賞できた要因は「自分の業績ではなく、良い選手に恵まれた賞」と言い、良い選手が良いコーチを作り上げる。逆もまた然りであり、良いチームを作っていくためにも全員が同じメンタリティーで突き進まねばならない。
「あなたの成長を助けることに対して何ができますか?」
JBAは昨年12月にインテグリティ委員会を立ち上げ、「クリーンバスケット、クリーン・ザ・ゲーム~暴力暴言根絶~」のメッセージを発信している。それにも関わらず、Bリーグのプロクラブで暴行や暴言があったことを遺憾に思う。そのような行為をせずに選手のモチベーションを上げるにはどうすれば良いか、参加者から質問が上がった。
「たくさんのスタイルや様々な世代のコーチがおり、昔は叫んだり、叩いたりしていたコーチもいたかもしれません。ですが、今はそういうことが許されない時代ですし、それで選手のやる気が上がる世代でもありません。私のチームに来た選手に対し、まずは『あなたの成長を助けることに対して何ができますか?』というアプローチをしています。それはケンタッキー大学でも、日本でも同じスタンスで接してきました。一方通行ではなく、お互いを知ることが大切であり、コミュニケーションを取るようにしています。長年コーチをしていると、10人に1人くらいは全然理解してもらえない選手もいます。しかし、自分からしっかり心を開いて面と向かって話せば、ほとんどの場合は解決できるものです」