あたりまえだが、大学1年生の選手たちは数ヶ月前まで高校生だった。同じ高校のチームメイトとして切磋琢磨し、心ひとつに勝利を目指してきた仲間が今、違う大学のユニフォームを着てコートに立つ。たとえば東海大の松崎裕樹と日本体育大の古橋正義は強豪・福岡第一高校の同期生。昨年のウインターカップで頂上を極め、互いの健闘を称え合った仲だ。その2人が今大会の準決勝で顔を合わせた。大倉颯太、八村阿蓮をはじめタレント揃いの2年生が主体のチームでベンチスタートとなった松崎とキャプテン井手拓実を除く4人が1年生というチームで先発出場した古橋はプレータイム(松崎15分半、古橋40分)も担った役割も異なったが、「負けたくない」という気持ちに変わりはなかったろう。試合前の心境を古橋はこう語る。「(福岡)第一は松崎主体のチームだったし、力的にも僕より上だと思っていました。けど、大学で戦う以上あいつにはやられたくありません。ディフェンスにもめちゃくちゃ気合いが入りました」
その古橋の“気合い”が伝染したように日体大はすばらしいスタートダッシュを見せる。モンゾンボ・クリスティンのファストブレイクを皮切りに得点を重ね、開始3分で12-2と10点のリードを奪った。が、東海大はあわてない。中盤、松本礼太のアウトサイドシュートで14-14の同点に追いつくと、そのまま逆転に持ちこみ1Qを20-24で終えた。試合が大きく動いたのは41-44の僅差で迎えた3Qだ。強度を増した東海大のディフェンスに苦しむ日体大は果敢に攻める井手、クリスティンのシュートもゴールに届かず58-70と水を開けられる。4Qに入っても東海大優勢の流れは変わらず、78-93で試合終了。『優勝』を目標に掲げ、2年連続決勝の舞台を目指した日体大の挑戦は東海大の強固なディフェンスの壁に阻まれることとなった。
敗戦は悔しい。だが、「学ぶことは多かった」と、古橋は言う。「東海大はこちらがちょっと隙を見せたらすかさず攻めてきます。シュートにしろ、フリースローにしろ、勝負どころの1本は必ず決めるメンタルもある。そこは個人としてもチームとしてもうちが足らなかったところだと感じました」。その一方で自分のディフェンスが予想以上に通用したという手応えもあった。「オフェンスに関しては正直、自分はドリブルも下手だし、ドライブも苦手。今、自分にできることはディフェンスを頑張って、ルーズボールに飛びこむことぐらいなんですけど、そこに自分が生きる道があると思っていて、その道を見つけた高校で3年間ずっと頑張ってきました。今回その部分で少し貢献できたのはよかったです。それを自分の武器としてさらに磨いて、課題がいっぱいあるオフェンスでも努力して得点に絡める選手になりたいと思っています。新人戦を経験したことでその気持ちがより強くなりました。松崎もそうだけど、他の同期の選手に負けないよう頑張ります」