アメリカの選手たちもNBAのアウェイゲームでブーイングを受けることはある。
しかしワールドカップという舞台では少し勝手が違ったのかもしれない。
さすがの彼らも国家を背負う重圧に加え、大ブーイングまで受けるとリズムをつかめないものらしい。
むろんアメリカ国旗を翻すファンがいなかったわけではない。
ただ前日におこなわれたアルゼンチン対セルビアのように、ファンが集まり、その場で飛び跳ね、歌を謡い、声援を送るような応援は、アメリカにも、そしてフランスにもなかった。
アルゼンチンとセルビアのファンの熱は、間違いなくゲームにも影響を及ぼしていた。
序盤からテクニカルファウル、アンスポーツマンライクファウルが飛び交うようなフィジカルなゲーム。
選手同士がぶつかれば、ゴッと鈍い音を発しそうなコンタクトこそが、フリオ・ラマスヘッドコーチが日本代表に求める「フィジカル」なのだろうと、開始5分で理解できた。
それくらいアルゼンチンのオフェンスも、ディフェンスも「フィジカル」だった。
大会前に発表されたパワーランキングで1位といわれていたセルビアもまた、それを受け止め、真っ向から立ち向かった
結果的に87-97と10点の差がついたが、そこには間違いなく熱があった。
試合後、アルゼンチンの選手たちはファンと喜びを分かち合うように、ともに謡い、輪になって飛び跳ね、アルゼンチンメディアは、ホテルへと向かうシャトルバスの中でも大いに謡い、手と手をぶつけあっていた。
アメリカも結果的に79-89と10点差でフランスに敗れるのだが、そこに前日のような熱は感じられなかった。
もちろんフィジカルコンタクトも、テクニカルなプレーも随所にあったのだが、ファンを巻き込むような熱を帯びなかったことが終盤のブーイングに変わっていったのかもしれない。
アメリカが負けたのはメンバー構成のせいではない。
ファンとともに戦えなかったことが、あのアメリカを敗北へと導いたのである。
ワールドカップは今夜からファイナルラウンドをスタートさせる。
まずは準決勝2試合。
スペイン vs オーストラリア
アルゼンチン vs フランス
ワールドカップにスマートなゲーム、スマートな勝利はいらない。
ファンを巻き込む熱をどれだけ発するか。
その熱をファンがどう受け止め、どんな熱で応えるのか。
ファイナルラウンドはそんなところにも注目してみたい。
文 三上太
写真 FIBA.com