埼玉県立久喜高校は、高校バスケット界で最も3×3に力を入れている学校だ。早川拓コーチがその有用性にいち早く目をつけ、練習に取り入れるだけでなく各種大会にも積極的に出場。U18日本選手権で2度の優勝を果たすなど、誇るべき実績も残してきた。
11月23日にはその久喜高を会場として、株式会社HANDOFFが主催する3×3 Spreads Gameが開催された。久喜高からは、トップチームのKUKI GYMRATSに加えてKUKI SECOND、KUKI NEXTの3チームがエントリー。今回の開催は年齢の縛りがなかったため、UENOHARA SUNRISEのような強豪も名を連ね、久喜高の3チームにとっては胸を借りる機会だったが、KUKI GYMRATSは昨シーズンまでWリーグでプレーした選手も擁するTOKYO DIMEから金星を挙げてみせた。

いわゆる “大人のチーム” の中にはTOKYO BBも含まれていたが、今回そのロスターに入った佐野萌笑は久喜高出身の選手だ。3年前、3×3を追求するために大学進学ではなく専門学校の道を選び、TOKYO BBの一員となった佐野は、今春から社会人として仕事と3×3の両立に励んでいるところ。3年間、毎日練習に明け暮れた母校の体育館に足を踏み入れると、やはり当時の思い出は脳裏に蘇るようだ。
「頑張る原点がここにあって、久喜高校だったから今もバスケを続けられてますし、人間性も成長できたかなと思ってて、久喜高校のおかげ、早川先生のおかげだなって思います。先生は、厳しい部分はたくさんあったんですけど、私たちがちゃんと考えながらバスケできるようにというのがあったんです。結局全然できなくて先生に言われるがままだったんですけど、プレーだけじゃなくて、ゴミ拾いでも何でも小さいことからしっかりやりなさいって。そういう人として大事なことも教えてもらいましたし、上に行きたいって思わせてくれたのが早川先生でした」
言うに及ばず高校は教育機関であり、早川コーチも教員。これから大人になり、社会に出ていく世代にとって、高校で受ける教えが重要となることも言うまでもない。理学療法士として新たな一歩を踏み出したばかりの佐野は、久喜高バスケット部で得た学びの大切さをとりわけ強く実感しているところだ。

「全てプラスになってます。新社会人になったんですけど、他の同じ立場の人を見てても『私は頑張れてる』って思うんですよ。常に目標を持って頑張ろうと思えるのはこの部活があったからこそなので、それが今の生活にも生きてると思います。そういうことを教えてもらったというのが一番です」
もっとも、早川コーチは「彼女はとにかく負けず嫌いで、努力する子だった」と当時から佐野の向上心を買っていたそうだ。そして、その向上心が今も佐野自身を突き動かしているということが、早川コーチの証言から読み取れる。











