髙橋自身が認めるように、FLOWLISHは髙橋ありきのチーム。その得点力をベースにチーム作りが進められてきたことを考えると、髙橋はいざ他のチームでプレーするとなった場合に、スタイルを微調整したり、異なる役割を受け入れたりする必要もある。突出した実力の持ち主だけがユニフォームを着ることを許される日本代表ともなれば、尚更のことだろう。その経験をいかにFLOWLISHに還元するか、これは髙橋にとって今までになかったチャレンジだ。
「個人技とか体の強さ、気持ちの切り替えの部分とか全部含めて、特に宮下(希保)なんかはすごいなと思って、勉強になるところがありました。自分もステップアップしたい中で、でもFLOWLISHにはチームとしての決まりごともあるので、それをやると他のみんなが『あれっ?』ってなっちゃうときもある。その葛藤でなかなか難しいところはあるんですけど、チームに所属する以上はそのコンセプトを優先しながら、みんなとしっかりコミュニケーションを取って、練習でちょっとずつスキルアップしていかなきゃなって思ってます」
女子の3×3も長く第一線でプレーしている選手がいる中、髙橋は本格的に3×3に転向してまだ3年目にすぎないが、既に申し分ない実績を残し、日本3×3界で貫禄にも近い存在感を放つ。それは今夏、岡田麻央のYouTubeチャンネルに出演した際に、岡田から「(3×3界に)だいぶ長くいる感じがする」と言われたほどだ。髙橋は「あれ、褒め言葉なんですかね(笑)」と言いながらも、瞬く間に台頭してきたその道のりに自負を抱き、トップランナーとしての責任感を携える。
「ありがたいことに、経験の密度がすごく高い時間を過ごさせてもらってるのがこの2年半。そこに気後れみたいなものは全くなくて、自信を持ってやっていきたいし、3×3だけに専念してる人として、自分はやっぱりそれを引っ張っていきたいなというのは変わらないです。
ワールドカップでWリーグの選手たちと一緒にやって、Wリーグのファンの方たちにも認知してもらったという感覚もあって、そこから3×3を見に来てみたという人も中にはいると思うんですよね。たまに『5人制はやらないの?』って言われるんですけど、でも3×3だけをやってるから出せる魅力というか、それで引き込めるお客さんもいると思うので、良い意味でもっと存在感を出していけたらなって思います」
決勝で敗れた直後はしばらく立ち上がることができず、囲み取材も低めのトーンで話し始めた髙橋だが、次第に笑顔が増え、時に大笑いする場面もあった。アグレッシブなプレーが生命線の髙橋は、その内面もポジティブ。既に前を向き、まだ余地のある成長を求めて走り出している。
文・写真 吉川哲彦