選手としては表舞台から姿を消した格好だが、齊藤洋介はこれまで通りに育成・普及に熱心に取り組んでいる。2020年に東京・新木場のF1 STUDIOで開校したRim Townの新スクールを、埼玉県三郷市にある鷹野文化センターで開いたのが2024年4月のこと。小学生対象の18時開始の第1部は10人程度からスタートし、現在は20人以上。中学生が部活の後に参加できる19時30分開始の第2部は、開校から2、3カ月ほどで40人の枠が埋まったそうだ。
齊藤は、3×3転向からほどなくしてBack Beat Attack(裏拍子)という理論を確立し、自身のSNS等で積極的に拡散してきた。もちろんこれはRim Townでも指導の大きな軸となっているが、齊藤自身、5人制時代まではその理屈を頭でわかってはいても、言葉で上手く説明することはできなかったという。
「ストリートの頃から自分なりに頭を使ってバスケしてるつもりでしたけど、プロになって『俺って全然バスケのこと知らなかったんだな』って気づかされるんですよ。プロとアマチュアでは、やってることが話にならないくらい違う。そこで学べたことはすごく大きかったです。自分が人とはちょっとリズムが違うというのも把握はしてたんですけど、言語化できたのは3人制に転向してからですね。言葉にできてなかったし、言葉にしようとも思ってなかったんですけど、ただ、いつかはこれを教えたいんだよなとは思ってて。それで、3人制に転向したときに肖像権とかいろいろ自由になったので、じゃあSNSで広めていこうかと思って、ホワイトボードに書き出すところから始めました。それまでは僕も『バーンと行って、このタイミングでスッと行く』くらいしか言えなかったです(笑)」
3×3転向前から使っていただけあって、Back Beat Attackは何も3×3に限った理論ではなく、Rim Townも3×3に特化したスクールではない。しかし、全員が得点に絡む必要がある3×3が育成に効果的な競技であることを実感している齊藤は、Rim Townの練習時間の最後を3×3のゲームに充てている。そこで良いプレーが飛び出せば「今のヤバい! めちゃくちゃ上手い!」と絶賛。そうすることで、子どもたちが周囲に遠慮することなく、積極的にチャレンジするマインドも育んでいる。
「まずコーディネーションやハンドリングをやって、それからスキル練習をして、残りの30分は今日やった練習、先週やったスキルを3×3で試してくださいっていう時間。実戦で試す機会は絶対になきゃいけないんです。レッグスルーとかビハインドドリブルを練習しても、クラブチームとかミニバスチームに戻ると『そんなおしゃれなことするな』って未だに言われるらしいんですけど、ディフェンスがいる状況でやらないと一生使えない。プロの選手はめちゃくちゃ使うスキルなんだから、子どもたちの年代からやるべき。ボールをもらったらパスじゃなくて、自分がやりたいことをディフェンス相手にやろう、ミスしてもいいからやりなって言ってます。3×3を広めるためというよりは、それ以前に3×3はめちゃくちゃ使えるものだからこうやって取り入れてるんです」