その横でオリンピックへ向け、日本代表のサポートスタッフとして尽力してきた鈴木慶太が、「まだまだ伸びますよ」と太鼓判を押した。TOKYO DIMEの練習でも、「日本代表で必要なことをチームに落とし込んでくれています。まだまだ学べることがたくさんあります」と藤髙にとっても、最高の環境である。東京オリンピックのときは開催国枠で出場が決まっていたこともあり、こぞってBリーガーが参加したが、「シーズン中に参加して良いというクラブも少なくなっている」ことを背景に、挑戦する選手も限られてきた。3×3.EXE PREMIERのレベルが年々上がっていることを藤髙も実感しているからこそ、「いろんな若手選手に負けないようにがんばりたいです」と4年後を視野に入れる。
こんなに素晴らしいスポーツがあることを、もっと多くの人に知ってもらいたい
4月からスタートした新たな環境について話を向けると、「え!? って驚く生徒がいました。でも、全く知らない生徒もいます」と話す藤髙にとっても驚きは多い。「最初は全く別の世界で、ストレスも溜まって口内炎が3つくらいできました。なかなか昼ごはんを食べる時間もなくて、寝る時間も少なかったです」と明かす。これまではバスケをするためによく食べ、しっかり眠るのも仕事だった。真逆の生活に苦労したが、ゴールデンウィークを乗り越えると「最近はもう慣れてきて、落ち着いてきたかな」とアジャストする。
バスケ部の副顧問として指導も行っている。「強化クラブではないので、週2回しか体育館が使えません。地区予選の初戦を勝ち抜き、2回戦突破が今のチームの目標です」という藤髙も、高校時代は全国区ではなかった。だからこそ、同じ目線で伝えることができる。
「僕が経験したことを話すとき、成功談はあまり生徒たちも食いついてきません。例えば、失敗談や苦労話を授業中や雑談の中で話すと真剣に聞いてくれます。たぶん、共感するところがあるからだと思います。もちろん成功体験のことも話しつつ、壁にぶつかってもがんばっていこうね、みたいな話をよく話しています」
教員としてはルーキーであり、「日々学びの場となっています」と成長しながら、誰もが経験できるわけではないプロとしての10年間で培ったものを活かしていた。
藤髙が3×3に出会ったのは6年前、「当時の大阪エヴェッサで、桶谷(大)さん(現・琉球ゴールデンキングス ヘッドコーチ)や東野(智弥)さん(JBA技術委員長)が誘ってくださいました。それ以前にもSOMECITYに少し出たことがあり、3人制の楽しさは知っていましたが、実際に公式種目となって試合に出たときに『バスケットってこんな面白い世界もあるんだ』と、最初の練習からすごく感じました。難しい競技ですけど、沼にハマってもう抜け出せない」からこそ、引退を表明してなお情熱を注ぐ3×3の魅力を語る。
「攻守の切り替えの速さは身体能力が存分に活かされます。2ポイントシュートやダンクも頻繁に出るので、バスケを初めて見た人も盛り上がりやすい。もちろんBリーグもおもしろいですが、特に3×3はバスケの良さがすごく出ている競技であり、そこが魅力かなと感じています。ちょうどBリーグが終わった頃にはじまるので、この機会にこんなに素晴らしいスポーツがあることを、もっと多くの人に知ってもらいたいです」
文・写真 泉誠一