今回、久喜高が会場となったことにも理由がある。競技の特性に着目した女子バスケット部の早川拓コーチが3x3を練習に取り入れ、KUKI GYMRATSというチーム名で大会にも積極的に参戦。2020年の3x3 U18日本選手権で見事優勝を果たしただけでなく、5人制でも今夏のインターハイ予選で3位に入るなど、公立校ながらここ数年は県内で上位に進出している。
早川コーチはこれまでに多くのゲストコーチを練習に招いて指導を仰いでいるが、その1人が齊藤。3x3 YOUTH TOURの開催を聞きつけた早川コーチは、3x3と5人制両方のスケジュールが目白押しで、翌日にも3x3日本選手権埼玉予選が控える中、「この日なら空いている。埼玉でやるなら会場を提供したい」と手を挙げた格好だ。齊藤は、記念すべき初開催の会場が久喜高となったことを喜んだ。
「早川先生とはもう3年くらいのお付き合いになるんですが、久喜高校が日本選手権で優勝した日のことは今でもよく覚えてますし、すごく嬉しかったんですよ。それからこうしてこの久喜高校で開催することができて、言ってしまえばこれも全国大会ですから、3x3を一緒に広げることができるのは本当に感慨深いです」
試合では、齊藤がUTSUNOMIYA BREXで実際に使っているセットプレーを久喜高の選手たちが披露する場面も度々見られた。もちろんこれは齊藤が練習で直接指導したものだが、齊藤によれば「これは早川先生の指導のおかげ」。新しいものを積極的に取り入れる早川コーチの下で、選手たちも自ら貪欲に吸収しに行く姿勢を持って取り組んでいる。
「彼女たちは、僕が教えなくても勝手に3x3を見てくれている。僕が教えることもあるんですが、他の子たちに比べると自分たちで上達してくれてますね。早川先生も、3x3を取り入れた理由として『5人制でも選手の自主性が全く変わってくる』って初めてお会いしたときからずっと言ってるんですよ。その通りに選手たちが動いてるんだなと思います」
この日は、かつて早川コーチの指導を3年間受けた久喜高OGがテーブルオフィシャルや審判を務めた。OGといえば、現在OWLS.EXEの一員として3x3.EXE PREMIERに参戦している磯貝玲奈もその1人であり、この夏にはアメリカで開催されたBridge the gapという大会に日本選抜メンバーとして参加するなど、着実に階段を上っている有望株。そしてもう1人、齊藤と早川コーチから将来を嘱望される選手も現れている。今春卒業したばかりの佐野萌笑は、大学ではなく専門学校を進路に選び、3x3に打ち込む生活を選択。3x3.EXE PREMIERのトライアウトを受け、複数のチームからオファーを受けたそうだが、齊藤から引き続き指導を受けるために、齊藤がプレーの傍らでコーチを務めているTOKYO BB.EXEに特別指定選手として加わることを決めた。齊藤は、佐野が良いモデルケースになることを期待している。
「男子もそうですが、女子は特に中学から高校、高校から大学と上に行けば行くほどバスケットの競技人口がガクッと減るじゃないですか。でも3x3の女子のプロはあるし、アマチュアでも活動できるし、選手にとって大きい窓口の1つとして3x3が存在するということも伝えていきたいです。萌笑には『日本代表を狙えるよ』と言ってるんですよ。今はWJBLの選手にならないと3x3の代表にもなれないような現状ですが、3x3専門の選手もいたほうが絶対に良い。萌笑にはそこを目指してほしいんです」