東京オリンピックから歴史を刻む新種目『3×3バスケットボール』妥協なき準備の舞台裏(中編)より続く
世界中がWOW!!となる女子日本代表の活躍
7月3日、男女3×3日本代表選手が発表された。
男子:保岡龍斗、富永啓生、アイラ・ブラウン、落合知也
女子:馬瓜ステファニー、篠崎澪、西岡里紗、山本麻衣
組織委員会の安田美希子さんに、一人のファンとして注目する日本代表選手やその見どころをうかがった。
「女子では山本麻衣選手と馬瓜ステファニー選手は、オリンピック予選でも世界中から注目されていました。以前から、国際大会に出るたびにチャットで『また彼女がすごいよ』とFIBAメンバーも驚くプレーを見せるのが山本選手です。私とさほど身長は変わらず、国際大会ではサイズこそ劣りますが、スピードや連携プレーでゴールを決めれば、世界中が『WOW!!』となるのも当然です。また、気持ちが良いプレーヤーという意見も多く聞きます。真正面から正々堂々とゴールを狙うプレーや、ぶつかって倒れた選手に手を貸すことを日本の選手は積極的に行うマインドの部分でも気持ちよく見られています。それで実力も伴っており、日本の女子はすごく強いです。男子はやっぱりパイオニアとしてがんばってきた落合知也選手。そこにBリーガーや現役大学生など新しい要素が入ってきているので、どういうケミストリーになるかが楽しみです。どうしても男子は海外と比較してサイズやパワーで比べられてしまいますが、日本はスピードや戦術、外からシュートを決める力が合わさるとその劣っている部分を凌駕できる力を持っています。男女ともにメダルは期待したいです!」
東京2020オリンピックで実績を作ることがスタート
2013年から3×3.EXEの立ち上げに携わり、3人制バスケットボールのレールを敷いてきた安田さんだが、「オリンピック正式種目に決まった当初は、正直あまり手応えはなかったです」と種目化されてもなお競技としては世の中に浸透しきれていない。当時、組織委員会の中でも、「『3×3(スリーエックススリー)って言うんですよ』という名称から一つひとつ説明し、机の上にはボールも置いて、地道な認知活動はつい最近まで行っていました」と3×3大会をはじめたときと変わらぬ苦労が続いた。
「2013年から日本中を行脚して3×3大会を行ってきましたが、本当に誰からも相手にされず、各地のメディアに来てもらうことさえすごく苦労しました。小さいことかも知れませんが、参加する選手たちにまわりに伝えてくれるようにお願いもしていましたね。大会を開催するためにいろんな場所へ交渉しに行きましたが、危ない、知らない、怖い選手がいそう…みたいな感覚がずっとありました。それでも誠実に、安全に大会を重ねて行った結果、人が人を呼び、そして実績が人を呼びはじめました。商業施設での成功実績を出すとまわりも気になってくれはじめますが、その良い循環に変わりはじめるまでにはやっぱり数年かかりました。オリンピック種目になるために取り組みはじめていた2017年頃には、遊びだと思われていたこのスポーツを見る目がなんとなく変わってきました。しかし、決定したあともまだまだ認知されませんでした。バスケ業界にとってはビッグニュースであり、ものすごく大きなインパクトはありましたが、一般の人たちには全く知られていなかったことが、ものすごく悲しかったです」
先に男子日本代表が開催国枠で出場を決めると、Bリーガーが興味を示したことでにわかに盛り上がりはじめる。その後、延期によって薄れかけたところに、今度は女子日本代表がオリンピック予選を突破し、世界の強豪を相手に自らの手でその切符を手にしたことで機運が高まってきた。
「東京オリンピックを安全に開催し、メダリストを輩出し、ここで実績を作ることがスタートです。3×3で夢を見る子どもたちが増えて欲しいですが、オリンピックを目指すことだけがすべてではありません。楽しむためにバスケと関わる人が増えて欲しいです。本当にこれからであり、3×3はまだまだ盛り上げられます」