ボクはテレビっ子だ。最初に出合ったアイドルは ── もちろんテレビの中でだが ── “たのきんトリオ”。平成生まれの読者にはピンと来ないかもしれないが、あのジャニーズ事務所に所属していたグループである。もっとも当時は、今の嵐や関ジャニ∞のようにグループ活動をしているというより、3人がそれぞれに活動をしながら、時折テレビで一緒になっているという印象しかないのだが……
そんな他愛もない話で始めたのには当然意味がある。テレビっ子がそのまま年齢を重ねておじさんになったボクは、今もこっそりジャニーズが好きだったりする。追いかけているわけではない。ただ「ゆく年くる年」を観るくらいなら、東京ドームでおこなわれている彼らの年越しライブを観たいと思っている。だからKing & Princeだって知っているのだ。「キンプリ」と呼ばれている彼らが『シンデレラガール』という歌を歌っているのも知っている。
聡明な読者はここで気づくだろうけど、ベルギー・オステンドでおこなわれた女子バスケットのオリンピック世界予選で、日本にまたシンデレラガールが出現した。「また」と書いたのはここ数年、特にトム・ホーバスヘッドコーチが就任してから、出場する大会でそうした選手が現れているからだ。
本橋菜子を先頭に、赤穂ひまわり、宮下希保と続いている。今回のOQTで新しく加えた選手はいないのだが、結果的にその株をグググっと上げた林咲希がシンデレラガールと呼べなくもない。
前日のベルギー戦では8本決めた3ポイントシュートのうち6本を追い上げの第4クォーターで沈めている。最終日のカナダ戦ではいきなりスタメン起用され、チームトップの21得点をあげて、大会ベスト5にも選ばれている。昨年おこなわれたアジアカップでの活躍を知る人からすれば、今さら“シンデレラガール”でもないだろうが、A代表として世界の舞台に立つのは初めて。それでいきなり大会ベスト5受賞となれば、そう言わせてもらってもいいだろう。
ただ、この“シンデレラガール”、こちらが思っている以上に冷静に現状を見極める力があるようだ。試合当日の朝に言い渡されたというスタメン起用についても、ベスト5についても必要以上に沸き立つことはなかった。
「シュートが入っても、入らなくても相手は大きいから、走ることなど自分のやることはたくさんあるから、そこは気を抜かず、シュートだけに専念するんじゃなくて、日本らしいバスケットができるようにどうにか変えていこうという意思はありました。日本は走るチームだから、それは絶対に変えたくなかったので、何が何でも一番に走ろうって思っていました」
「ベスト5はうれしいですけど、まだ練習が足りないなって思います。今日の試合で言えば3ポイントシュートですけど、ディフェンスのローテーションであったり、フィジカルで当たってくるのに対してどうやって避けたり、もしくは強くぶつかって行ったりする技術をもう少し学ばなければいけないし、今日はドライブに行って、パスはできたんですけど、ドライブからのシュートバリエーションをもう少し増やしていきたいなって思います」
OQTの“シンデレラガール”はなかなかストイックだ。
バスケ徒然草「ベルギー・オステンドOQT編」
第6段「三本の矢」
第7段「見頃、咲き頃」
第8段「King & Prince」
第9段「曇天の荒波」
文・写真 三上太