自分の成長に対して自分で責任を取る
現役時代から世界と互角か、それを上回ろうと戦ってきた。日の丸を背負うとは、それだけの責任と覚悟が必要なのだ。選手時代の大神はそう思っていたし、コーチになった今でもそう思っている。
異なる点もある。そうした意志を、選手時代はそのときどきのヘッドコーチのバスケットに沿って貫くだけだったが、今は12人の ── 合宿期間も加えれば、それ以上の数の ── 選手たちを導かなければならない。覚悟は同じでも、責任の質は変わってくる。
だからこそ、大神は選手たちにこう告げた。
「結果に対しての責任はコーチが取る。でも自分の成長に対しての責任は自分で取ってほしい」

アジア競技大会の女子日本代表候補は平均年齢が24歳と若い。A代表ではないとはいえ ── 一部、A代表の候補と重なっている選手もいるが ── 日本代表の候補に名を連ねた以上、彼女たちは世界へと通じる扉の前に立つことを許されたわけだ。アジア競技大会はもちろんのこと、その先には2028年のロサンゼルスオリンピックや、その4年後におこなわれるブリスベンオリンピック。その中間にあたる2030年には、ワールドカップが日本で開催されることも決まった。若いメンバーの前には、道しるべがはっきりと示されている。
それらに向けて、どう成長していくか。できるかできないかではない。やるかやらないか。大神はそう問うわけである。
同時にそれは若い今だからこそ、思い切ってできることでもある。
「チームとしてここを目指していこうね、という話はもちろんあると思うんですけど、まずは自分の成長にしっかりとフォーカスするのが一番いいのかなと思っています」
むろん選手たちが主戦場としているWリーグと、アジア競技大会をはじめとする国際大会とでは、さまざまな面で異なる。大会の規模も違えば、相手選手のサイズや手の長さ、コンタクトの強さも違う。バスケット観だって国によって違うだろう。日本でできることが、国際大会では容易にできないこともある。国内の「これくらいで大丈夫」が通用しないのが国際大会なのである。
それは世界のバスケットをさまざま経験し、そのたびに幾度となく苦汁を飲まされてきた大神自身が誰よりもわかっている。だからこそ、アシスタントコーチ陣とともに、中国や韓国、チャイニーズタイペイといったライバルの名前を出しながら、思考の枠を広げてようとしている。その先にはアジア競技大会に出場しないアメリカ大陸やヨーロッパ、近年、力をつけてきているアフリカの国々も視野に入っているはずだ。

大神自身は「9月のアジア競技大会で優勝する、そのための12人を選ぶっていったところが、ひとつの自分の責任にはなると思う」と前置きしつつも、選手たちにはやはりその先も見据えてほしいと思っている。願っていると言っていいかもしれない。
「アジアを戦っていく上で、アジア競技大会もひとつの大会ではあると思うんですけど、でも若いからこそちゃんとビジョンを持ってやれるかどうかは、選手たちにちゃんと問いたいなと思っています」
目の前の大会一つひとつを、勝つために全力で戦いながら、しかし結果には固執しすぎない。勝てば自信にして、さらに上を目指し、負ければ悔し涙を流しながら、そこから立ち上がる力を育んでいく。成長の糧は自分のなかにある。
できるかできないかではなく、やるかやらないか ── 選手だけでなく、コーチとしての大神もまた、アジア競技大会でそれを噛みしめることになるだろう。
文・写真 三上太











