大会も5日目になると、メディア・ワーキングルームでは星取り勘定が始まる。
特に1勝2敗の日本が決勝トーナメントに進もうと思えば、他国の勝敗が左右してくる。
「マリがセルビアに勝ったらどうだろう?」
「カナダにはもうぶっちぎってもらったほうがいいんじゃない?」
「そうすればオーストラリアはきょう、負けることになるから……」
「得失点差も考えなきゃ」
日本が残り試合をすべて勝てばいいのだけど、いろんなケースを考えてみたくなるものらしい。
現地で決勝トーナメントに進みたいと思っているのは、選手やコーチだけではない。
もちろん、そう思っているのは日本だけではない。
シドニースーパードームでおこなわれた、きょうの第1試合は2勝1敗のベルギーと、3連敗中のボスニア・ヘルツェゴビナとの対戦だった。
結果は<85-55>でベルギーの完勝である。
その試合で目を引いたのは、ともにWNBAでMVPを獲得したことのある2人のマッチアップだった。
ベルギーのエマ・メッセマンと、ボスニア・ヘルツェゴビナのジョンクェル・ジョーンズが開始直後からマッチアップを始める。
しかし、こちらもメッセマンがジョーンズを圧倒した。
いや、圧倒したというより、彼女のディフェンスへのフォーカスがボスニア・ヘルツェゴビナ全体にリズムを作らせなかったといったほうがいい。
8得点に終わったジョーンズは終始フラストレーションを溜めているようだった。
メッセマンの執拗なディフェンスを突破できず、それに囚われると周りから異なる手が伸びてきてボールを失う。
ゴールに近づけば、たちまち2人、3人に囲まれてしまう。
ベルギーの完勝はメッセマンひとりの力ではなく、彼女の集中を周りの選手たちがしっかりとサポートした、文字どおりのチーム力だったわけである。
その試合が終わるころから日本の記者たちは、マリがセルビアに勝てば……というかすかな期待を抱いて、「シドニーオリンピックパーク・スポーツセンター」へと移動を始める。
同じ公園内にあるのだが、シドニースーパードームからスポーツセンターまでは歩いて10分ちょっとはかかってしまう。
しかし、前後してシドニースーパードームでおこなわれるアメリカと韓国の試合も見ておきたい。
厳しい戦いになることはわかっていただろうが、韓国だって、まだ決勝トーナメント進出が絶たれたわけでないのだから。