「絶対にブロックに来ると思ったんです。だからフェイクしようかなと思ったんですけど、(フェイクの後に)彼女が降ってくると思ったら怖くて投げちゃいました」
マレーシアでおこなわれていたプレOQTの最終戦、日本はオーストラリアを82-69で破り、3連勝で大会を終えた。
その第3Q、渡嘉敷来夢はゴール下でボールを受けたとき、左からオーストラリアのリズ・キャンベージがブロックに飛んでくるのが目に入った。203センチのビッグマンである。冷静に考えればシュートフェイクでかわすべきシーンだ。渡嘉敷もそれはわかっている。しかしそれ以上に、その先のことが脳裏をよぎり、飛び上がってしまった。ブロック ── 。
なぜ怖がるんだ? 日本代表なら戦えよ。そういった意見もあるかもしれない。
しかし実際のキャンベージを見たら、そう思う気持ちもわからなくもない。
とにかく大きい。
高さもあるが、幅もある。
そんな選手が上から“降ってくる”と思えば、ちょっと引いてしまっても無理はないだろう。
むしろドリブルで逃げなかっただけ、十分に戦ったともいえる。
もちろん渡嘉敷自身もそれでいいとは思っていない。
前半にも同じようなシーンがあり、そこではブロックこそされなかったが、結果的には焦ったようなシュートを打ってしまった。
「そういうところでちゃんとシュートフェイクを使って、落ち着いてプレーできればなと感じました」
渡嘉敷はこのようなブロックをされることを望んで、この大会に参加した向きもある。
国内であればよほどのことがない限りブロックされることはない。
だが世界は違う。
193センチの渡嘉敷と同じか、それ以上の選手はたくさんいる。
実際、オーストラリアには193センチ以上の選手がキャンベージを含めて4人もいる。
そんな相手と戦いたい。
たとえブロックされても、それを体感することで8月の東京オリンピックまでに対処法を考えることができる。
そんなことも考えて渡嘉敷はこの大会に参加したのだ。
そしてブロックをされた。
一方で渡嘉敷は「9月のアジアカップのときよりもすっきりしています」と言うほどの手応えも感じている。
練習を続けてきた3ポイントシュートも踏ん切りよく打てたし、ドライブでゴールにアタックすることもできた。今大会向けに取り組んだローポストでの1対1こそ披露する場面がなかったが、少なくとも自分が取り組んできたことを出そうと意識し、実際にそれらのプレーを出すことはできた。
シュートの精度はけっして高くなかったが、それは練習するだけだと渡嘉敷は言う。
「とりあえず自信を持ってアタックをして、アタックをすることによってダメなところといいところが見えてくると思うので、今日はそれがよかったんじゃないかな。決めたいシュートがたくさんありましたけどね。それはもう練習するしかないと思います」