赤穂ひまわりは笑っていた。
力強いドライブでゴール下まで潜り込み、そのままシュートを放ったところまではよかったが、ボールがリングの上を通過し、自分の上に再び落ちてきた。
そのボールを拾いながら、笑っていたのだ。
苦笑いである。
本人もそれを認める。
「ヘロヘロだったんで……ちょっと弱いなって思いました」
マレーシアでおこなわれている女子のプレOQT。
チャイニーズ・タイペイと対戦した日本は83-57で勝利し、このグループの上位2位までが進める2月のOQT行きを決めた。
しかし内容はけっして喜べるものではなかった。
チャイニーズ・タイペイのフィジカルなディフェンスに対して、ソフトに入りすぎた第1Q。
徐々に立て直していったものの、第2Qになってもまだ目の覚めない選手たちがいる。
第3Qになるとようやく主力メンバーが目を覚ましたが、第4Qは一転、ベンチメンバーがもうひとつエネルギーを出せずにゲームを締めてしまった。
「勝ったことはよかったけど、あの出だしと第4Qはめっちゃ怒っているよ。全然楽しくなかった」
トム・ホーバスがそう振り返るほどだ。
「前半、3人くらいの選手がチャイニーズ・タイペイのフィジカルなディフェンスに負けました」
その3人が誰かまでは言わなかったが、ホーバスのやり玉に挙がった一人は赤穂だろう。
本人も十分にそれを理解している。
「第2Qの途中でベンチに下がったとき、トムさんから『もっとアグレッシブに行って! 何で行かないの?』って言われて、確かに行っていないなと。それで第3Qでアグレッシブに攻めることを意識したら、フィニッシュまでは行けたので、常に行く意識を持たなければいけないなって思いました」
赤穂は学生時代から運動能力に長けた才能豊かな選手として注目されていたが、一方で日本代表に選ばれてもどこか自分を信じられず、傍から見ると遠慮をしているようにさえ見えていた。
しかし今年度の合宿からスイッチが入る。
徐々にその才能を発揮し始めると、9月のアジアカップでは経験のある選手たちを飛び越えて、日本のスターティングメンバーに名を連ねるようになったのだ。
今大会も2試合連続でスタメン出場を果たしている。