まずはファンが、この上海の地でワールドバスケットボールを体現した。今大会の結果は厳しいものになったが、バスケット日本代表だって、いつかトルコのように、チェコのように、こういった大きな舞台で世界を驚かせることができる、はずだ。
この大会が残したものは大きい。世界の壁は厚く現実を突きつけられたが、参加し経験したことによって得られたものはかけがえのない財産になっていく。それは選手にとっても、私たちファンにとっても同様にだ。日本バスケットボールがどんな道を歩んでいくにせよ、これから先いくつもの困難が待ち受け、立ち向かうたびに大きな覚悟が問われることになるだろう。
そして再び迎えるワールドバスケットボールの舞台は、一年後の東京オリンピックとなる。
特別に許可をもらい、ゲーム開始時に選手が入場する通路の奥に入れてもらった。ミックスゾーンとは反対側ということになる。アリーナ外周の廊下まで出ると、今はひっそりとして、人ひとりいない。その薄暗い空間を見つめていると、入場を待つ選手の息遣いが聞こえてくるように思った。ハドルを組み声を掛け合い、集中を高めている姿がぼんやりと見えたようだった。
ふと、アリーナMCによるコールの残響が、耳の奥から蘇ってきた。
「チィィーーム…ジャパァン!」
そのままコートに向かって選手が入場する道筋を辿ってみる。フロアへ通じる通路へ抜けると、そこにはミックスゾーン側とはまた違う文字が壁にあしらわれていた。全ての選手がこの文字の横を通り抜け、フロアへ駆け出していく。立ち止まることなく。振り返ることもなく。
日本はもう一度立ち上がり、駆け出すことができるだろうか?壁の文字に問うてみる。
壁にはこう書かれていた。
“TIME TO SHOW THE WORLD YOU’VE GOT GAME”
「世界に見せてやるときだ、お前はやれる」