強い日差しに濃い影が落ちる。
地面は乾き、傘をさしている人もいない。
何より、濃い青に白い雲のコントラストが鮮烈だ。
上海に上陸以降初めて見る快晴の空。
水しぶきに霞む、暗い街のイメージは跡形もなく消え去った。
日本中が注目するUSA戦のこの日、上海は一週間ぶりの好天となった。
日本がはるばる上海までやってきて世界を相手に大冒険を繰り広げる、その最初の区切りとなる予選ファーストラウンド最終日としては、これ以上ないくらいの晴れやかさではないか。
この日は注目の一戦だけあって日本からのメディアも多く、フォトグラファーとしては撮影ポジションの確保が心配だった。だが予選を共に戦ってきた他媒体のフォトグラファーの方々と共に、何とか場所は確保できた。
一つ心配事が減れば一つ心が軽くなる。
今日の晴天のように、日本チームの選手たちも晴れやかに開き直って、自分たちらしいプレーをしてほしいと願うばかりだった。
だが相手は世界最強のUSAだ。生半可な気持ちでは太刀打ちできない。相対するのにも相当の覚悟が必要だろう。そうでなければ、これまで積み上げてきた自信すら木っ端微塵に吹き飛ばされかねない。
実はUSAの対チェコ、トルコとのゲームを見て、これはよっぽど心してかからないとお話にもならないんじゃないかと危惧していた。ダブルスコア、いやトリプルスコアすらあり得るんじゃないかと。
ゲームはやはりと言うべきか、開始からUSAに圧倒されっぱなしだった。
日本の強みを出すという以前の問題だ。圧力のあるディフェンスに押されボールが回らない。ポイントガードのパスミスでターンオーバーになる。これではゲームにならない。
このまま何もできずに圧倒されっぱなしで終わるのか。世界最強のUSAに一矢も報いることなく「世界ナンバーワンの強さを体感できました」という選手のコメントを聞くことになるのか…。
正直に白状すると第1Qの出来を見て私は、何とかトリプルスコアは免れてくれ、ダブルスコア以内でフィニッシュしてくれ、と心の中で願っていた。
「120対40」…そんな悪夢のような数字が頭に浮かんでいた。
この日本中が注目する一戦で、いかに相手がUSAとはいえ手も足も出ず、一つの見せ場もないまま終わるなんてあまりにショッキング過ぎる。
だが結果はトリプルスコアを免れ100点ゲームも許さなかった。チームUSAも認める活躍をした馬場を初め、ドラフトナンバー9ピックの八村、メンフィスグリズリーズに所属する渡邉、サマーリーグを経験した比江島、今大会で評価を上げた田中、皆積極果敢に攻め見せ場を作り、ファンを喜ばせ、最終的には何とかダブルスコア以内で決着したのだった。
ふぅ、ほっと一安心だ。
いや、これで喜んでいいのか??
自分に突っ込みたくなる。だが、それでもジャパンは、これまでの自信が木っ端微塵に吹き飛ばされるその寸前でぎりぎり踏みとどまれたんじゃないだろうか。