『熟練したプロの目』をパスしたのであれば、もう恐れる必要などありませんでした。
表現する怖さが全くなくなるわけではありませんが、間接的な根拠があるだけで背中を強く押されたように感じました。
そして恐る恐る自分の内面を表明し始めたその先で、なによりも書く意欲を湧き上がらせてくれたのは、読んでくれた人たちの言葉でした。
「コラム読んでいます」
「面白かったです」
そう声をかけてもらうたびに、良かった、笑ってもらえた、もっと良いもの書きたい、その他もろもろのポジティブな感情で身体が満たされて、また次の原稿へと向かわせてくれました。
一人で悶々としていた頃には想像もできなかったような、充実した世界を体験させてくれて、本当にありがとうございました。
ちょっとくらいアンチがいてもいいんじゃないか、と思うくらい皆さん暖かいお言葉をくださいました。
「アンチが沸き始めたらその作家は本物」みたいな論調を目にしたことがあるので、そろそろやべえアンチ出てこないかなと思ってみたこともありますが、でも出てきたら出てきたでかなりストレスだと思うのでやっぱりいいです。今後も褒めてください。
『今後も』と書いたのは、これからも文章を書いていきたいと思っているからです。
新しいお仕事の合間の、限られたリソースしか費やすことができないので、どのような形が取れるのか、そもそも実現できるのかもまだわからない状態ですが、機会を探していくつもりです。
これからはバスケットボール選手というフックもなく、先生でありセキュリティとなって支えてくれる人もいない、いち表現者としての純粋な実力を磨いていかなければなりません。
どのように進んでいくべきか、まだまだ手探り状態ですが、でも最初の一歩を踏み出す前のあの頃に比べればとても健全で、明快な視点を持てています。
自分の求めるものが形になろうとなるまいと、自分が進みたい道を好奇心に従って、怯えながらでも少しずつ歩いていく、その選択がもたらす経験が、自分を豊かにしてくれるのです。
このコラムはこれにて最終回となりますが、またどこかで、皆さんの目に留まるものを作れるその日を今から想像しています。
二年間、とても楽しかったです。
タイトル引用元:『映像研には手を出すな!まとめ見Blu-ray』/大童澄瞳原作、湯浅政明監督/ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント 2021
石崎巧
1984年生まれ/北陸高校→東海大学→東芝→島根→BVケムニッツ99(ドイツ2部リーグ)→MHPリーゼンルートヴィヒスブルグ(ドイツ1部リーグ)→名古屋→琉球/188cmのベテランガード。広い視野と冷静なゲームコントロールには定評がある。著者近影は本人による自画像。